醜い君が見たいんだ

夜。不安を覚えて、
毛布を首まで引き寄せる。
圧迫感。
擦り切れたポリエステルの僅かな重み。

小さな束縛に懐かしさを感じる。
波打ち際の泥濘に沈むように。

小さなベッドの上。
ふと頬に触れたのは、
少し長めの髪の毛。
乾き、痩せ、褪せた茶色。
慣れた不快感から気をそらし、
その人へと背を向ける。

アルコールの匂いを隠す、
知らない芳香剤。
ゆっくりと、毛布から抜け出した。

醜い君を知っている。
肌の荒れた君を知っている。
家事の出来ない君を知っている。
肘の内側のほくろの形を知っている。
足の親指の巻き爪の捻れを知っている。
左の犬歯がわずかに長いことを知っている。

タオルが水道水を吸ってしわくちゃだ。

愛を忘れたことを知っている。
愛してたことを憶えてる。

そっと、濡れたタオルで綺麗な顔を覆い隠す。
僕を、見ないで欲しかった。

十分間の抱擁。
目を閉じたまま、
水の落ちる音に耳を澄ませる。

ベッドのスプリングがきしまなくなった頃。

緩慢に落ちる水音のように、
死んだ髪の毛の細胞のように、
僕たちは眠りに落ちていった。

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