疑いようもないわたしたち(悩み多き感情たちの詩 その5)改訂版

素直ちゃんは 生まれてこのかた
疑うということを知りません 

嘘つきくんは 生まれてこのかた
息を吐くように
年がら年中 嘘ばかりついています

ふたりは保育園時代からの幼なじみで
気づけばいつも一緒にいる
とても仲のいい友だち

素直ちゃんはまったくもって
疑うということを知らないので

嘘つきくんはいっつも
いい加減な嘘シコばかりついては
素直ちゃんをからかって
面白がって遊んでいました

あるとき その辺で拾ってきた石ころに
絵の具でもって色を塗りたくり

この真っ白な石は
きのう 空から落っこちてきた石

だの

この真っ赤な石は
大むかしに亡くなった人の
紅い涙が結晶化して出来た石

だの

この真っ青な石ころは
地球の一部分がコロリと欠けて
剥がれ落ちてきた石

だのと

兎にも角にも デタラメばかり

それでも素直ちゃんは
なんの疑いも持たず
空からってことは 月とかの石かな
涙って結晶化すると紅くなるんだね
地球が欠けたら 地球は痛くないのかな
なんて真面目に 瞳をきらきらと輝かして
大事そうにその石っころを見つめます

あんまりにも疑わないので
コレはその辺で拾ったただの石ころ
オレが絵の具で色を塗ったんだよ
と種明かし

それでもやっぱり素直ちゃんは
きらきらした瞳で
石ころたちを見つめています

実は今日は 素直ちゃんの誕生日でした

なんの変哲もない ただ色を塗っただけの
そこいら辺の石っころでも
嬉しそうに喜んでくれている素直ちゃんを見て
嘘つきくんは本当は内心
とてもとっても 嬉しかったのでした

そうして ふっと訊ねてみました
  素直ちゃんってさ 嘘ついたり
  人を疑いとかしないけどなんで?
  オレ、いっつも嘘ばっかりついてからかってるのに
  ムカついたりしないの?」

すると素直ちゃんは
  するわけないよ、だって
  嘘つきくんは嘘をつくけど
  嘘つきくんが嘘ってわけじゃないでしょ
  嘘をついてる嘘つきくんは 
  本当だから

嘘つきくんを真っ直ぐ見つめて
真面目に素直にそう答えました

嘘つきくんの頬が 
みるみる真っ赤っ赤に火照っていったのは
云うまでもありません

ハッピーバースデー 素直ちゃん

画用紙に描かれた 嘘ッコ誕生日ケーキの
蝋燭の火を ふたりで吹き消して

嘘も疑いもなく
ただケタケタと
ケタケタと 
笑うのでした

投稿者

東京都

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