『おそうしき』
髪型を気にする女
世間話で笑い合う声
走り回る子供
うるさい!
内がわで叫ぶ
そんなことなら いっそ来ないで
だったら ごく親密な家族だけで
しめやかな密葬する方が よっぽどいい
お父さん
そんな 冷たい顔しないでよ
どんなに年老いたって お父さんはお父さんなんだ
もうこの世にいなくったって
私はあなたの子供なのだ
あんなに近くにいた…
それなのに これだって 現実なんだ!
ぼうぼう 骨のにおいがする
ぼうぼう お父さんは燃える
ぼうぼう 煙りは にがい
にがい かなしみの味
かつてお父さんだった
白い 残がいたち
私は 割りばしで お父さんを持っているんだよ?
お父さんの大好きだった
おすしじゃ あるまいし!
ふしぎと
たたみに正座も悪くない
心しずかに
お父さんのことだけを考えて
お父さんのことだけを考えて
おぼうさんの お経にしびれている
お父さんが 昔 しびれていた
ビートルズみたいに
お父さんフィールズ フォーエバー
かわかない涙
ダムダムダムで食い止めたのに
とうとう 決壊してしまった
お父さんのこと
少ししか知らないような
こういう機会にしか 会わないような
親戚たちに背を向けたくて
こんなときにだけ なんで泣く
しらじらしい涙に 背を向けたくて
心配して慰めてくれる
そんな人たちにも 境界を ゆるしたくはなかったのに
病院で見送った
あの時の 集中豪雨だけで
十分だと思っていたのに
精進落としのマスカレード
食べる人々 飲む人々
私たちは そういうふうに いのちをつなぐ
でも ねえ今は
せめて今日だけは
お父さんと一緒に はしを置きたい
冷めたてんぷらの味なんて 知りたくもないんだ
私が知りたいのは 幸せだったかってこと
そういうことについてただ今は考えたいんだよ
いつも笑顔が似合ってた
歩いてた 生きてた 運動会でずっこけてた
私のめだまは レンズでさ
私の頭は ブルーレイでさ
あなたのことを忘れないんだ
この世に 生きている限り
あなたに会える そのときまで
コメント
読み進めて
悼んでいる姿が
見えました
これはやたら感情移入しちゃったな。
僕はどっちかっていうと、やぁやぁやぁ、飲んでくれ食ってくれ騒いでくれ笑いあってくれって側のヤカラなんだけど、気持ちはわかるんだなー。
やはりデリカシーですよね。
そのなかでユーモアも好きだな。愛こそはすべて と 抱きしめたい 気持ちになるなぁ。
あ、ほんとに感情移入させられたのです。
自分は父親のことあまり好きじゃなかったし、ちょうどコロナ禍でもあったので、ささやかなお葬式でなんの感情もわかなかった。でも自分の娘は自分のこと大好きなので、死んだらこんな風に思ってくれるのかな。と思うとうるっときました。
その場の空気感や作者(語り手)の思いが絶妙でいて、親密な関係であった父親との悲しみとユーモアの入り混じる感情がとても良く表現されていて心にすんと響いてきました。自分もどんな風にあろうか。
なにも書けませんが、詩にのった情感が強くて。すごいです。
場の情景と、作者の思い、情感が絡まって、何度か読み返してみました。上手く感想が言えなくて、すみません。
集中豪雨だけで十分だと、の言葉、心からの弔いを感じます。
この詩を読んで、色々思ったのですが、この詩に全部込められていると思いました。
せめて今日だけは
お父さんと一緒に はしを置きたい
冷めたてんぷらの味なんて 知りたくもないんだ
私が知りたいのは 幸せだったかってこと
そういうことについてただ今は考えたいんだよ
ここに、じんと感動しました。
私が知りたいのは 幸せだったかってこと
特にここが、素的です。