激烈ハイスクール

三階の男子トイレの一番奥の個室の便座の裏側に
アナーキズム と落書きしたのは暴力的な僕だが
後日思い立って確認すると誰かが手を加えていて
アナツキリズム と書き替えていやがった畜生め
それがどういう意味かは言うまでもないだろうが
あえて註釈をつけるなら僕はまだ貞操を守る身で
日夜不埒な妄想に脳内が満たされている所為かな
前の席の女生徒の制服から透けるブラジャーの線
あるいは微かに匂う汗や 切ない吐息の響きなど
ほんの些細な刺激で僕の欲望は硬質に聳り立って
微分積分良い気分 いや実際は断然と僕は懊悩を
放出する機会を窺いながら黒板に憎悪をぶつける
また愚鈍な友人らが持ち込む自慢話やしたり顔に
辟易しながらも心の奥では羨ましいと思っていて
その劣等感が余計に自らを縛り上げるとも知らず
教科書の隅に世界を美しく滅亡させる神について
パラパラ漫画を描くのが近頃の習慣であるのだが
窓の外にて爆ける太陽が空中を旋回しながら落ち
何もかもを焼き尽くす様をじっと見ていた放課後
これが青春の蹉跌と呼ばれるものの正体なのかと
涙を流す姿を誰にも気付かれないよう願うばかり

[TONOMOTOSHO Rebirth Project No.054: Title by まるか]

投稿者

大阪府

コメント

  1. このタイトルはなかなかの難題(笑)。
    「微分積分良い気分」で笑ったけど、
    今どきの人は元ネタわかんないだろうね。

  2. 青春の一コマの切り取り方はいろいろあるので、もちろんこれも有りだなと思いました。

  3. 前半も好きだが、最後の4行でもっと好きになるなぁ。

  4. 中学生の頃の同級生にこんな妄想を膨らませていた奴がいたなあ、と振り返ったらそれは自分の事だったのかも。

  5. 定型の詩は、型にはまった「緊張感」があります。その緊張感が、性をも含んだ青春の蹉跌をあぶり出す。懐かしい小説ですね。当時、読みました。石川達三さん。

  6. 目を背けたくなるようなハイスクール特有の気恥ずかしさをめっちゃ表現しててすごいなと思います。
    “太陽が〜焼き尽くす様”のところ、かっこいいです。好きです。

  7. コミカルで、残虐、学生服着たケンタウルスみたいに、下半身が獣。

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