Kの告白
オマエ、そんなに泣くヤツだったのか?
“いつもどうり普通に接していて下さい”
・・・そう、Kは皆に言って周っていった。
初めて目にする彼の心もろさや偽りの強さに僕は涙が溢れてどうしようもなかった。
これは、決して彼への同情やもらい泣きではない。
ズボンの後ろのポケットから
几帳面に四角くたたまれた白いハンカチを取り出し、
事情を仲間たち1人1人に話して
赤く腫れ上がった目を押さえ
静かに笑みを作ろうと口元からの迷いで
声が震え、言葉という音を形成していたね
目が泳いでいる…と仲間たちはよく彼の会話する時の表情をそう言っていた。
僕たちとまともに目を合わせたら辛くて泣き崩れるのを我慢してたんだね、きっと。
“××っスよ!” の語尾が特徴で、
普段はお調子モノで軽いノリのK。
オマエ家族思いの優しいヤツだったんだな。
Kの父親は全身転移の末期がんであることを昨日初めて知らされた。
そして、そのせいで彼は動揺を隠しながら明るく振舞っていたことも理解できた。
オマエの父さんは、きっと幸せだよ。
こんなに泣いてくれる家族がいるんだから。
絶対、幸せだよ。
僕はKに冗談を言って笑わせた後、
いつもどうり何も言わず無口な男で仕事を続けていた。
そして、いつになく、話しかけてくるKが僕の仕事の様子を見守っていた。
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