数え切れない光の粒子
あなたはあなたが何故「どうして」なのかを不思議に感じざるを得ない
あなたは瞼を閉じそっと香りをかぐ
フランスの夜の匂い
卵とオレンジキュラソーの香りだ
数え切れない光の粒子が移動していくのが寂しくて
あなたはカーテンを閉めた
それは沈んでゆく
時の通過点
「こんなふうに
頭蓋の外へ
懐かしい記憶たちも移動してゆくのね」
と
あなたはそっと呟き
あなたは……
午後の瞬きを繰り返す
時がゆっくり回り始める
やがて雨が降り始め
あなたは水浸しになり
露わになり
眉をしかめ
歯をかみ合わせ
唇を開き
あなたは……
午後の落ち着きを取り戻す
フランスの夜の匂い
卵とオレンジキュラソーの香りの中で
このようにして
あなたとあなたは
互いの存在の不確かさを確認しはじめるのだ
確かに
コメント
あなたは制限されない光の粒子、透明な皿の上で、カットされない粒子、言葉でも、数式でも、外へ出ましょう、頭蓋の外へ、乱れ飛ぶ蜉蝣の外へ。
シャレオツだなあ。フランスなんて行ったこともなければ、行くつもりもないけど、夜の匂いは感じてみたくなりました。
@坂本達雄
ありがとうございます。坂本さんのコメントはすでに一編の詩ですね!
@トノモトショウ
ありがとうございます。フランスの夜の匂いを感じて頂けたようで幸いです。
始まりと終わりが表現上の対っぽくて、サンドされている浮遊すらする「あなた」が一体何者なのか、そんなことは前向きに知りたくないなと思わせてくれる心地良さでした。
@あぶくも
詩的なコメント、誠にありがとうございました!
とても甘いお菓子の匂いがします。
匂いの記憶は強いです。
@たちばなまこと
ありがとうございます。匂いは記憶と結びつき易いですね。秋は良い匂いに出会いやすい季節ですね。