轟くものを前にして
見上げる人たちがいる
それはコンビニエンス・ストアの
裏手にあった

容赦なく建物へ襲いかかり吼える
ユンボの牙
窓ガラスはまる壁面が潰されて割れる音
崩れ落ちていく壁の塊
剥がれたコンクリートの粗いおうとつ
窓枠の跡だけをのこした壁の奥は
ぼうぼうと渦を巻く闇に
むき出しのケーブルらしき物も垂れる
辺りけぶる粉塵へ浴びせ続ける放水の高く
高く噴き上がる

四十四年経った近所のビル
またここも
高層の新築分譲マンションに変わるのだと
見上げる人達の後ろ姿は
話しているのだろうか

立ち尽くす軀のまわりで
洩れ聞こえてくる声は
言葉となって耳に届かず
ひそかな振動を繰り返す

生肌へ張りついてくる様な轟きに
眼にするもの以外の 何が
見えるというのか

そんなものはみえてこない
街の一角の未知なる風景

投稿者

滋賀県

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