帳の向こう側
厳かに下りた夜の帳
つまり光の境界線 向こう側
ざわざわ蠢く野生の時間
未完の小説 響き渡る遠い咆哮
滔々と語る星々 しんと耳澄まし頬撫でる
爆ぜる地球 またひとつの星と化す
数少ない人間だけ レンズ越しに想像
陽光は8分19秒 いわんや光年過去罪滅ぼし
「幻の眼鏡のようなものやさかいに」
灰になるまでこの身纏い 今際の際端折れど
「それも心心(こころごころ)ですさかい」
永い太古の魚 乾いた鱗 四方八方弾け飛び
媚びだす記憶 闇 安堵 静寂深まるか
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*「」の言葉(京言葉)は引用です。
三島由紀夫作『豊饒の海』の最終巻
「天人五衰」からの。
コメント
あぶくも様へ
ノートへ作品を写し書きしながら再読、再読させていただきました。
あまりに深い表現に、わたくしなど…コメントできる言葉も、
無いのです。
読ませていただけたことが、今とても嬉しいです!
ありがとうございました。
@リリー
さん、ありがとうございます。
ノートに書き写して頂いたなんて、恐縮です。光と影(陰)、明と暗、様々なスパンでの時間の流れのようなものを込めてみました。
この写真も良いですね。良いカメラですか?
@たかぼ
実はiPhone13のカメラなんです。息子みたいな(友人の息子)15歳と、秩父長瀞に男ふたり旅をした時に彼が持っていたiPhoneで私が構図を指定して撮ってもらった写真です。私のはiPhoneX止まりなので暗闇しか映りませんわ(^^)
@あぶくも
さん。スマホのカメラも進歩していますね。私のは12proですが十分なのでミラーレスを使わなくなってしまいました。
@たかぼ
さん、私も一眼レフはもうしばらく使ってないですね。お出かけ時ももっぱらiPhone(カメラ性能で言えばせめて最近のにしたいけど)と老眼気味の肉眼レフ(笑)です。
@あぶくも
さん。肉眼レフ^_^
「」内の何弁?関西弁?がいい味です。
星空などの写真、帳の向こう側 という題からずっと来て 静寂深まるか で終わるところがとても好き。
@こしごえ
さん、ありがとうございます。
この詩で「」の言葉(京言葉)だけは引用なんです。三島由紀夫『豊饒の海』の最終巻「天人五衰」の終盤からの。詩作中にもここのインパクトがあり過ぎて引用するかどうか迷いましたが、素直に心に浮かんでいた言葉でもあったので畏れ多くも使うことにしました。
未完の小説 響き渡る遠い咆哮
このフレーズが、この詩を背後から支えているように思いました。冒頭にも書かれていましたが、厳かな雰囲気がありますね。
@長谷川 忍
さん、ありがとうございます。
そのように感じていただけて嬉しいです。
豊饒の海は天人五衰で一応完結したのでしょうけれど、未完の小説は漱石の「明暗」あたりでしょうか…