面影哀歌
紅葉で淡く色付いた水面に
ビー玉のような水滴を垂らせば
虚しい響きで水は揺れる
永遠にも等しい時間それは揺れて
遂には何事もなかったように
初めから、何もなかったかのように
そよ風は水面を優しく撫でていった
つまり、時間とはそういうものだ
去りゆく時間を額縁に飾って
過ぎゆく季節をハンガーにかけて
ぬるくなった水を飲み干せば
ガラスのコップは音を立てて崩れた
ひときわ大きな粒子に映ったのは
水に滲んだかつての幻影か
水に滲んだかつての亡霊か
いずれにせよ、それは立ち去るばかり
いくら影を落としたとして
目に映るのは現在ばかり
大事に育てていた花が枯れること
風が吹いて大事な花を枯らすこと
過去は過去として、今は今として
留まる物はここにはあらず
留まる者はここにはあらず
留まる言葉、ここにはあらず
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