うすむらさきいろ
夜明け前のベランダからきみが飛ばした紙飛行機が
雨の匂いのする湿った風に乗って海辺までたどりついて
疲れた顔で煙草をふかす港湾作業員の肩に着陸した
薄紫色の空気を震わせるパナマ船籍のタンカーの汽笛は
眠りに落ちていくきみのベッドまでは届かない
そうやって世界は繋がっているようで切り離されている
夢の中できみは港湾作業員と並んで岸壁に座り
彼の唇から奪った煙草をくわえて薄紫色の煙を吸い込んだ
空と同じ色の煙が湿った風にかき消されていく
ボラードで羽を休めるカモメが不満げに短く鳴いて
彼ときみはそれを見て意味もなく微笑みあった
そうやって世界は切り離されているようで繋がっている
コメント
世界はいつもパラレルで夢とうつつどっちがリアルかもわからない。紫煙うかぶ朝あけきらぬ港に僕もいたことがあったような不思議な気がした。
世界は、たぶん、当人同士の気づかないところで、繋がっているのだと思います。時空を超えて。夢をまたいで。私も、紙飛行機を飛ばしたくなりました。
僕も詩を書いた紙で紙飛行機作って飛ばしたことあります。病院の窓から(泣
一方通行のようで通じ合うこともあるのかもしれないですね。
どこかに出口か、入り口がないかと、何度か読み返してみたのですが、彼ときみのいる世界は時空間の歪みがあるようでした。
カッコいい!
>王殺しさん
現を生きる私たちが見ている夢は、それ自体もまた現の一部なのかもしれないですね。
>長谷川 忍さん
紙飛行機、そういえば長らく飛ばしてないなあと、この詩を書きながら思いました。
>りゅうさん
病院の窓から飛ばした紙飛行機が、誰かに届いていたらいいですね。
>イチカワナツコさん
うすむらさきいろ、というタイトルを付けるのがいちばん悩みました(笑)。
>timoleonさん
出口・入口、そういう読み取りかたもおもしろいですね。
>あああさん
ありがとうございます☆
>那津na2さん
ありがとうございます◎
何と言うかこれは、とても好きです。
平行線がいつか近づいていって交わるのか、それともどんどん遠ざかってしまうのか。二つの別の世界があるのか、それとも分かれたように見えるだけなのか。
いろんな問いがぐるぐるします。
そして、かっこいいです。
>たかぼさん
ありがとうございます!
>あまねっち
夢と現実はきっと表裏一体なのでしょう。
(↑テキトーなことを言っている)
読みにきたの何回目かなんですけど、すごい好きです。
もう、プリントアウトしちゃおうかと思っています。
>たちまこちゃん
ありがとう(;;)ありがとう(;;)