ボヘミアの舞踏家と赤いケシの花

光を求めたケシの実が
死の影を作ろうとする
舞踏家の中に侵入し
5年4ヶ月後に 花を咲かせた

月下の赤いケシの花は艶めかしく
美しく濡れていたが

月はニヤリともせず
この道化者を知らないと言った

路上に落ちる死の幻影に襲われ
歩くのもままならない舞踏家は
片膝を付いたまま
しゃがみ込んだ

どうなっているんだ!
これは、、、、?

漂う都市の幽霊が耳元で
生あたたかい囁きを聞かせた

よーく見てごらん
君の影を
覚えてないか?
かつて 君が欲しがったモノだ、、、

背中から悪寒を感じ
舞踏家は慌てて
逃げようとしたが

サーチライトの様に
男につきまとう影が行く手を阻み
舞踏家はもはや
正気に戻るのを拒んだ

もはやこの影は俺の影でなく
かくも こうあるべしと言った
空間に吸い込まれちまった

風すらも感じない
ああ 凄く爬虫類的な皮膚だ

本能的に感じた身の危険

完全に開いた花弁

舞踏の完成

絶望と恐怖

かつてない恐怖に

舞踏家は祈ろうとしたが

何に対して
祈ればいいのだと思った時

世界は死の影でいっぱいに成った

赤いケシの花は言った

やっとこれで光に会える

投稿者

東京都

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。