true romance
思いつきでふらっと入ったバーは
息苦しいぐらい居心地が悪くて
愛想のないバーテンは
何を話しかけても頷くだけで
煙草だけがどんどん燃やされていく
こんなことなら
コンビニでビールでも買って帰って
お気に入りのAV女優の
白い肌が揺れるのを眺めながら
詩でも書いてたらよかったんだよな
なんて
ぬるくなっていくビールを飲みながら
送ることのない手紙を頭の中で書く
今日だけは
きみの奴隷になってあげる
ぼくが王様になってもいい
きみがぼくの娘になって
ぼくがきみのパパになって口づけする
きみがガラスなら
ぼくが真綿になって包んであげる
きみが水なら
ぼくが容れ物になって形を与える
きみが氷なら
ぼくが炎になってきみを溶かす
きみが悲しい気分なら
ぼくがバカみたいに笑わせてあげる
きみが泣くなら涙を舐めてあげる
ぼくが泣いたら黙って抱きしめて
きみのこれまでと
ぼくのこれまでを相殺してゼロにしよう
きみが子どもみたいに自由に笑えるのなら
ぼくは大人みたいにすべて受け入れる
きみが知らないところに連れて行きたい
ぼくの知らない景色を見せてほしい
きみの知らないことをぜんぶ教えてあげる
ぼくの知らないことをぜんぶ教えて
きみが欲しいだけ
ぼくをあげよう
きみがきみでいられる境界線の手前まで
ぼくもきみを奪ってあげる
きみがいつかぼくに飽きてしまう日が来たら
ぼくは新しいページを書き足すだろう
きみはぼくのすべて
ではないからこそ
ぼくはきみを満たすことができる
それは
ありきたりな魔法かもしれないけれど
ひとつだけ
嘘をついた
今日だけ
じゃない
ずっとだ
でも
このバーにはきっともう
二度と来ない
コメント
こんなこと、ほんとうに語ってくれるひとがいたら是非「きみ」側になってみたいです。
うそでもいいや。
@たちばなまこと さん
ぼくも、自分が女の子なら、こんなこと言われたいですね。