分身
日常から離れた空間ひとつ
大切なものを小箱に詰める
ずっと息を止めていたんだ
思いも言葉も酸化するから
真ん中に到達できない道で
外周ばかりを回り走る遊び
真空管アンプの中に入って
体温の交換だけが機能する
奏でる音がふいに増幅する
理解しようとすれば逃がす
説明しようとしたら消える
最高な今さえも破り続ける
両掌に掬った水の泡のよう
いくつかの層で生を捕える
もともとはひとつであった
度重なる分裂の果ての記憶
海のキラキラ集めてあげる
空の青さに溶け込んだなら
これとそれとは分かたれず
すべて世界の分身だと悟る
コメント
イヴ・クラインかと思うほどの見事な青。しかしクラインとの違いはグラデーションにあります。外尾悦郎「自然には境目がない。空の色も海の色も。色が無限にグラデーションかかって変わっていく。ところが人間が作るものはすべて境目がある。それをガウディは悲しく思ったんじゃないかな」。グラデーションを無限の分身と呼んでも良いかもしれませんね。
@たかぼ
さん、アートなコメントありがとうございます!
偶然にも、私はこういう澄んだ雲ひとつない青空(もっと濃い青)を見ると、デレク・ジャーマンの『BLUE』という映画を思い出すんですが、まさにこの映画はイヴ・クラインをオマージュしているとも言われているとか。外尾さんの言葉、なんか沁みますね。サグラダ・ファミリア、見に行きたいなぁ。グラデーション、無限の分身。素晴らしすぎる解釈。
コメント失礼いたします。
なにかはわからないけれど、このなにかが沁みてきたとき、なぜか手をあわせたくなるような、そんな心持ちになる気がします。
すべてが世界の分身…。一行一行のフレーズが、「分身」という言葉に集約されていきますね。お写真の青がこの詩と上手く調和しています。
@ぺけねこ
さん、コメントありがとうございます。
まったくその通りでめちゃくちゃ同感です。宗教なんてその気持ちだけでいいんじゃないかとさえ思ったりもします。
@長谷川 忍
さん、コメントありがとうございます。
名付けようのない大切なもの。それらは自分自身を含めた分身なんだと思うとすべてに合点が行く感じがするのです。写真も昨日この詩を完成させた出先で撮った空で、これがあったので完成に至りました。