人生-或いは四季-

消えてゆく夏
消えてゆく秋
消えてゆく春
消えてゆく冬
消えてゆくみんな

花衣散り
蝉時雨あがり
焼き芋は冷め
雪は溶けた
いつものように

消えてゆく過去
消えてゆく今
消えてゆく未来
消えてゆく時
消えてゆくみんな

玉の緒は絶え
世は忍び難く
人は衰え
誰も残らない
いつものように

気付けば何処か遠くにいて
手にはなんにも残らない
髪に白雪
痩せ枯れ木
目は落ち窪んで光は無く
振り向けば誰かを見ていた
そう昔の私を
だけど酷くひしゃげて
だけど酷く霞んで
もう誰だかわからない

気付けば時は過ぎ去って
春の次にまた春が
冬の次にまた冬が
めぐりめぐって
いくつの四季をやり過ごしたのか
振り向けば何もなかった
そう何もかも
ひどく薄れて
ひどく汚れて
もう何が何やらわからない

消えてゆく人
消えてゆく日々
消えてゆく四季
消えてゆく何か
消えてゆく…僕

投稿者

奈良県

コメント

  1. 四季の移ろい、もっとつきつめるなら、生きることの、寂しさ、哀しみをも想ってみました。抒情的な描写の中に、無常感が漂っていますね。

  2. 長谷川さんコメントありがとうございます。いつ作ったか分からないような詩ですが込められた無常観を感じとって頂けたなら幸いです。

  3. 圧倒的な寂寥感がすごく心に突き刺さりました。人生を振り返ると、たしかにそれはすべて既に消えてしまった過去のもので、だからこそ思い出とかいう曖昧で形のないものにすがるのかなあ、とも思います。自分は割と人間関係などもリセットしがちで、思い出すらもどんどん忘れていく質なもので、特にこの詩には共感させられました。

  4. トノモトショウさん、コメントありがとうございます。共感して頂いて嬉しいです。無常は世の常、人の常。夕暮れ時の様なセンチメンタルな気分を味わって頂けたなら本望です。

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