8月32日

かき氷のいちごシロップのにおい
午前中の図書館の学習室のにおい
昼下がりの児童公園の熱い風のにおい
夕立のあとのアスファルトのにおい
プールサイドの塩素のにおい
線香花火の燃えつきたあとのにおい
田舎のおばあちゃんちの畳のにおい
昼寝している妹のタオルケットのにおい
蚊取り線香の煙のにおい
屋台のりんご飴とソースと綿あめのにおい
湿り気を帯びたしょっぱい海風のにおい
海の家の仮設トイレのにおい
虫取りに出かけた夜明け前の森のにおい
虫かごの中のカブトムシのにおい
おかあさんが塗ってくれたムヒのにおい
食べ終わったあとのスイカの皮のにおい
しおれかけたアサガオの花のにおい
枯れたヒマワリの種のにおい
死んだカブトムシのにおい
泣きながら絵日記を書いた涙のにおい
夏休みのおしまいの日の枕のにおい

投稿者

大阪府

コメント

  1. 「におい」だけで夏の思い出を全部表現できるものなんだねえ。遊んでばかりで宿題やってない感じとか、カブトムシの短い命とか、しっかりギミックもあって巧い。最近の子供達の夏休みは必ずしも8月31日までじゃないってのもミソだな。

  2. 夏をにおいで振り返り、夏休み最後のにおい、そしてタイトル。良いですねえ。

  3. トノモト氏もふれているけどカブトムシの生死が遠い昔の夏の終わりを思い出させる。
    においは感情そのものに被り、夏のあのいろいろな感情が浮かぶ。ほんと余さずうまい。

  4. におい、という表現がいいですね。どの光景も、懐かしいにおい。切ないにおい…。

  5. ほぼ全てのにおいに心当たりがあります。匂いもあれば臭いもありますね。嗅覚は古い脳が司る原始的な感覚と言われ、それ故しばしば記憶と強く結び付き、その時の情景をありありと甦らせる力がありますよね。嗅覚を使って少年の日の夏休みにフォーカスを当てるというアイデアが素晴らしいですね。

  6. みなさまコメントありがとうございます。
    ぼくは四季の中で夏が一番嫌いで、できることならば一年中ぜんぶ冬だったらいいのにと思っているくらいなのです。大人になってからは虫が大の苦手で、カブトムシなんか見るのも嫌ですし、最後に海で泳いだのがいつだったのかも忘れました。
    そんなぼくでも、やはり心のどこかに夏に対するノスタルジックな郷愁のようなものはあったりします。不思議なものですね。

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