失職-あるCAの場合-
気付けば三十路は手前
迫り来る人生の黄昏
空に一筋の白線
滲んで見えなくなる
幼い時、あの線の上を走りたいと思った
あっという間に時は流れ
着慣れたジャケットを今日脱ぐ
空を駆ける夢を描き
綺麗な翼
揺れる瞳
エンジンの音
流れゆく人の流れに私は揉まれ
失いつつある若さを持て余す
減り続ける貯金残高
空っぽな気持ちに
積み上げてきた過去までも削られる様で
そうだ今日はあのスーパーで
沢山のものを買ってしまおう
ぱんぱんの冷蔵庫を
眺めていれば
少しくらい
気が晴れるかも
机の上にいるのは23歳の私
もはや今は他人となった仲間たち
一度見たら忘れられぬ
素敵な夢
遠い思い出
消えてゆく
消えてゆく
目の前から
コメント
ずうんときました。特にCAというのは大きな憧れを持ってその扉をくぐったのだろうなと想像できます。この時代、多くのこのような思いがあるのだろうな。スーパーのくだりから、消えていく 目の前から まで気持ちが揺さぶられました。
王殺しさんコメントありがとうございます。
コロナ渦で大量解雇されたうちの1人を描いてみました。