万華鏡
波打つ夜明けのシンメトリー
ゆらめく都市はモザイク
降り注ぐ光線に貫かれ
何もかもがわからなくなるんです
アタシを中心とした複雑な位相は
巨人の掌に攪拌されて
プレパラートに染みた極彩色の影を
不完全な図形にするんです
とても素敵な幻でしょう
とても悲惨な幻でしょう
アタシを疎外する粗末な位相は
屈折のプロセスすら勘違いして
胎盤と同じような遣る瀬なさも
確実な輝度にするんです
浮き立つ落日のシンメトリー
きらめく都市は万華鏡
とても異質な幻に襲われ
何もかもがわからなくなるんです
[TONOMOTOSHO Rebirth Project No.031: Title by ひかる]
コメント
バランスの取れた文字と文章構成で、万華鏡という題に相応しい光のシンメトリーが描かれ、近未来の東京を舞台としたアニメの一幕のような都市のイメージが想起させられました。
上から下でシンメトリーになっていて、しかしその実は素敵で悲惨でアシンメトリー。
相変わらずの精密さ、周到さに舌を巻く。
今回は少しあっさりだったかな。
上下でミラーリングされていて、ちょうど水辺にイルミネーションが浮かんでいるようで、眩く儚いイメージが80年代の歌謡曲のようでもありました。
何もかもがわからなくなるんです
その通りだと思います。私には何もかもがわかりません(わかったつもりではいますが、これではダメだとも思うけど)。そのことをこの詩では絶妙なバランスで書いてあると感じます。