京浜の匂い
今年は梅雨明けが早い
夕方になっても暑さが残り
汗をぬぐった。
浜通りといっても
海があるわけではない
首都高速道路の向こうは
工場街
貨物列車が頻繁に通り過ぎる。
海は運河に変わり
それでも細々と
漁業は続いている
漁船にまじって
屋形船や釣り船も水に浮かぶ
橋からそれらの船を眺めた。
小さな稲荷神社があった
その脇を
少女が二人駆け抜けていく
彼女らを目で追いつつ
運河に沿って歩いた。
横浜の中心街はすぐそこだが
廃墟のような家並みが続く。
京浜、という言葉が
よみがえる
記憶の貝殻となって
身体の奥底に絡みつく
匂いそのものになる。
燻っていく。
通りは稲荷神社の少し先で
運河に遮られていた
半分水に沈んだ釣り船が
夕風に煽られ
ゆらゆら漂っている。
コメント
長谷川さんのこの旅情シリーズ(勝手に名付けてるし…)好きだなぁ。
なんかこのまま小説が始まったり、物語の途中を感じさせたり。
作者と一緒に風景を眺めている感覚になれるのも良いなぁと思います。
あぶくもさん
京浜工業地帯に近い川崎の下町で生まれ育ちました。川崎から横浜にかけての臨海地区は、私の原風景です。時々、忘れ物を探し?にこのあたりを散策しています。…もう少し、旅情シリーズを続けようかなと思っています。