お伽話
空気に横顔が馴染む
雨より細かい幾つもの皺を
わたしたちは刻んできた
ある朝
昔見た海の話を一通りすると
共済に入りたい
あなたは言った
わたしが知っている海には
果実のゼリー寄せみたいに
いつもクラゲがいた
ビニール傘を初めて差した時の
半透明になった感覚
けれどわたしは
そんな風にはなれなかった
過ぎていく午前や午後の生活音が
ひとつひとつ耳に届き
またひとつひとつ
忘れられていく
同じ時間軸を生きているのに
時間は同じように経過しない
それは救いであると
思えるだけ生きた
朝の共済のことだけど
そう切り出すと
何の話だっけ、と
あなたは言って
他のことに熱心に手を動かす
何の話だろうね
こうして今日のわたしたちの
お伽話は終わる
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