ツバメの遠足
いつもの通勤電車
流れ行く見慣れた景色を
見るともなしに眺めていると
気づけばツバメが並走している
つり革につかまったまま
少し身をのりだして確認したところ
くちばしの先には
空豆のように小さな風呂敷包み
僕の前に座る女の子が
決然たる態度で立ち上がり
窓を開けるや否や
ツバメは見事な旋回で
窓の隙間をくぐり抜け
車内へと舞い込んだ
ぴよぴよぴよ!
にわかに騒がしくなった向こうの網棚では
綿毛のようなヒナが十羽程身を寄せあっている
一羽が黄色い口を開け
残る皆は頑なに口をつぐみ
銘々足元に小さな風呂敷包みを抱え込んでいる
網棚にもう一つ
風呂敷包みが置かれると
鳴いていたヒナは澄ましかえり
親鳥は身を翻して
開いたままの窓から
外の世界へ飛び去った
こんな若葉目映い日和には
ツバメの子どもも遠足なのだ
慣れ親しんだ作業というように
女の子は窓を閉めると
背筋を伸ばして座席に腰掛け
さっきからずっとそうしていたように
電車の振動に身をまかせている
コメント
皆で春の風が走る先になんとなく一致団結して
遠足へいく賑やかさと、少しだけ皆の足が浮いているような場面を感じました。
ちいさな風呂敷包みが可愛らしくてニッコリしました。
ツバメの家族は人をやさしい気持ちにパッと変えるマジシャンみたいですね。
@kフウ
様
嬉しいコメントありがとうございます。
春は明るさもありますが、浮き立つようなそわそわも感じられ、まさにコメント頂いた、足が少し浮いているような感覚です!
風呂敷包みには、何か良いものが入っている印象を、私は持っています。結び目をほどくと、わあっと思えるような、良いものが。小さな風呂敷包みも、きっと良いものが入っているはずです。
世界に魔法は必要ですね。ささやかな魔法、たくさん見つけたいです。
「心配いらないよ、大丈夫。」そんな言葉が包に在るような、勝手な想像を・・・汗。
最後の五行が効きました。
@風太郎
様
コメントありがとうございます。
おっしゃる通り、親鳥はその気持ちも一緒に包んだに違いありません。
窓を開け閉めした女の子は、平然としているように見えますが、一人で通勤電車に乗っていることですでに緊張しているところに、ツバメに親切をしたい気持ちと、突然立ち上がって窓を開ける恥ずかしさと、内心はひどく動揺していたかも?と、推察されます。