白き花

白き花

並んで歩いていても
あの人は
いつも上の空

遠くの山の後ろから
立ち上る積雲を眺めていたり

私たちの間を通り過ぎる
トンボを目で追ったり

道端の野花へ
目をとどめたり

この世界に
素晴らしいものを
次々と見出だすことに
夢中なのです

私は微かに傷付いていることを
兄に打ち明けたけれど
言わなければ良かった

そうやってお前は
傷付いておきたいのさ
あいつの存在が
自分に作用していることが
嬉しくって仕方ないのだろう

兄の意見、
というより分析に
私はがっかりしたけれど

出来得るなら
少しでも長く
この不安定な世界が
保たれますように

今もまた
私が話している最中

はっと息を飲んだ様子に
隣を見上げれば

あの人は
雑木林の奥へ
眩しげに目をやり
口元には微笑

細めた視線の先には
照りのある葉の上に
大きな花が
一つ、二つ、三つ

目をすがめても
眩し過ぎるくらいの
白い花

◇◆◇

並んで歩いていると
あの人は
いつも話をしている

話題はどうだって良い
あの人の声を聞いていると

あらゆる素晴らしいものを
この世界のそこかしこに
見つける才能を
僕は有した気分になる

いや、
素晴らしいものの
声なき声の主張を
敏感に察知できる
そんな能力を
僕は発揮できるのだ

山脈の後ろから
流れくる白雲

吹き抜ける風の上に
とどまっているトンボ
草原の花

僕の幸福については
誰にも明かさない

特に分析屋である
あの人の兄には

彼は親友であるけれど
僕が組み立て満足している
舞台背景の裏のつっかえ棒を
無邪気に暴いてくるだろう

がっくりするような羽目を
僕は自ら招いたりはしない

出来得るなら
少しでも長く
この彩りある世界に
止まっていたいのだ

あの人の声を聞いている間
崇高になっている僕は

また素晴らしいものを
見つけた

木々の向こう
照りのある葉の上に
大きな花が
一つ、二つ、三つ

泰山木の
まばゆい程の
白き花

投稿者

大阪府

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