手の引継ぎ

未明、波のように
街はあった
一欠片の月に支えられた
クラゲ状の外階段や
寄せては返す
街灯の孤独
その繰り返しの中で
本物の海は
おそらく街のどこかに
広がっていた
ビルとビルの隙間から
薄っすら差す朝日の中
南北に走る幹線道路を
カンガルーが横切ると
女たちは川の岸辺に集まり
思い思いに洗濯を始める
記憶の中の一室で
ふと電話が鳴る
誰もが受話器に手を伸ばし
街は少しずつ
結晶していく
それからしばらくして
手が手であることの
引継ぎが行われる

投稿者

コメント

  1. 電話のベルは朝日なのでしょうか。
    不思議な夜明け(目覚め)に感じました。

    意識が眠っている時、世界はきっと未完なのかもと。
    きっと、慌てて結晶するのでしょうね。
    量子学がどこまで辿り着くのかと想像しながら楽しく読ませて頂きました。

  2. @風太郎
    風太郎さん、コメントありがとう。
    まさに量子力学のシュレーディンガーの猫ですね。
    量子力学なんて最先端の研究テーマなのに、オカルトとも親和性が高いのが興味深いです。
    子供のころ、自分が認識していないところに世界は存在していないのではないか、と思って不安な気持ちになるのは誰もが通ってきた道なんでしょうね。

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