カラス

カラス

朝から風が吹き荒れており
色々なものが飛ばされていた

新聞紙、ほうき、薬缶、カラス、山高帽、下駄、額縁……

僕は薬缶を追いかけて
ついでに隣にあった額縁も拾い
転がってきた手押し車に
それらを乗せて
カラスを懐にねじ込んだ

風に抗って手押し車を押し
防風林の赤松の陰に逃げ込むと
懐からカラスが顔を出し
「大変に吹き荒れておるね
時におやつを持っていたらくれろ」

たもとを探ってみたら
風で舞い込んだらしい
柘榴の実が入っていた

ルビーのような実を
カラスが食べている間に
僕はそこらの石でかまどを作り
三本マッチを無駄にして
集めた小枝にようよう火をつけ
足元の水溜まりの水を薬缶で沸かし
そこに生えていたドクダミを入れた
茶を作ったは良いが
湯呑みがないため思案していると
折よくアルミの容器が飛んできた

僕が赤松の幹に身を潜めて
茶を飲み一息ついていると
紅い実を食べながらカラスが
「これからどうするつもり?」

小首を傾げて不安そうなため
僕は飲み終えたアルミの容器を
風に投げ入れてから
手押し車から額縁を取り出した

額縁の枠の向こうに広がる
そよ風笑う野原へと
まず手押し車を押し入れ
カラスをまた懐に入れようとすると
「我輩の紅い実!」
と言うものだから
柘榴も一緒に懐に入れ
額縁の縁を跨いだ

手押し車を押しながら
野原を歩きだした僕の肩に
お花を摘んできたカラスがとまった

投稿者

大阪府

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。