砂漠のとうもろこし(A面・B面)

(A面)

砂漠の真ん中に
ピアノがあった
他には砂しかないのに
遥か上空を
飛行機が飛んでいく
窓から乗客たちが
悲しい格好をしたまま
とうもろこしを
食べているのが見える
ピアノを弾こうとするけれど
弾いたことのないわたしは
指先から砂になって
砂漠に溶けていく
乗客の歯の隙間から
とうもろこしが
砂漠にこぼれ落ちる
やがて発芽して
たわわに実るだろう
そして誰かがそれを見つけて
とうもろこし、と
名づけるだろう
 
 
 
(B面)

砂漠に悲しみが落ちていた
ひとつひとつ拾い集めると
音符になった
僕はそれをピアノで弾いた
下手くそだけれど弾いた
聞きつけた兄が
飛行機で遊びに来てくれた
僕らは主翼の上で
茹でたとうもろこしを食べた
兄の歯の隙間から
とうもろこしがこぼれていく
もう、うまく食べられないんだ
老いた兄が言う
それでも美味しいと言って食べる
心は昔のままだけれど
老いた僕も
美味しいと思った

投稿者

コメント

  1. B面を加筆。

  2. @たけだたもつ
    返歌
    もろこしのこぼれるたびに手を添えて変わらぬ甘さ変わらぬ笑顔   らどみ 

    *初コメ現フォ

  3. @足立らどみ
    らどみさん、ありがとうございます。

    夕暮れにとうもろこしのハーモニカ甘いと言った兄の横顔 たもつ

    初出 同じく現フォ

  4. お邪魔します。
    やはり、んー参りました

    指と指の間から
    すべりおちてゆくものを
    必死で名付ける

    お邪魔しました。
    読めて良かったです。

  5. @wc.
    wc.さん、コメントありがとうございます。
    名づけというのは前々からからあるテーマのようなもので、遡るといとうさんの、ちくわぶの詩に辿り着くのかな、と思っています。未だに結論が出ません。

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