私が知るロマンチック(心斎橋篇)

放課後。

また少し遠い場所へ
行きたくなった。

そこには、
山いっぱいに咲く山桜もなく、
器用に森を駆ける鹿もいない。

ただ電車に乗れば、
本町という街へ着いた。

そこには桜の山ではなく、
夜の寂しさを抱えた人々がいた。

心斎橋へ向かう道。

私は、
失恋した猫のように
何かを探しながら歩いたわけではない。

ただ、
心斎橋へ行きたかった。

夜になっても
光と人の声で満ちている場所へ。

その通りを歩いた。

橋まで歩いた。

人の流れの中へ歩いた。

そこで見たのは、
静かに流れる運河だった。

思えば、
私の過去もまた、
あの運河のようではなかったか。

絶えず流れ続け、
いつか灯りに満ちた家々へ
たどり着いてゆく。

街の光は、
夜を昼間のように変えていた。

私はいつの間にか、
ここを昼だと
思い違えていた。

道の途中で、
私は小さな歌を口ずさんだ。

誰かはこちらを見て、
誰かは自分の時間を急いでいる。

けれど私はただ、
心が弾むままに、

心斎橋の街を歩き、
美しい言葉を
いくつか書き留めただけだった。

どれほど私が輝こうとしても、
心斎橋の夜には敵わない。

この街こそが、
本当のロマンチックであり、
夜に咲く彩りなのだ。

誰かの視線を恐れず、
ただ大阪の奥で
静かに咲いている。

私はただの旅人。

ここを訪れたあと、
小さな詩を書く者にすぎない。

夜が深まり、
疲れた時には、

まだ見ぬ夢の続きを
紙の上に残してみる。

夢の中で、
私はもう一度
心斎橋に出会えるだろうか。

夢の中でも、
雨や風を恐れないこの街に
心を動かされるだろうか。

この美しい夜に、
驚いて目を覚ますだろうか。

何年も詩を書いてきた。

けれど私は、
自分自身の夜が
どんな色をしているのかなど、
考えたことがなかった。

私はただ、
賑やかな場所が好きだった。

若さの中でしかできない、
小さな浪漫が好きだった。

思う。

青年は、
浪漫を知らなければならない。

美しいものを愛さなければならない。

月の下で詩を読み、

暇な午後には
誰かとお茶を飲みながら
語り合うべきなのだ。

時には、
知るということが
何より大切になる。

「わかる」

ただ一つの言葉。

けれど人は、
それを知るために
千年もの時間を費やしてきた。

浪漫とは、
決して高貴なものではない。

それでも人々は、
それを求め続けている。

私は、

浪漫を知り、

同時に強さも知っている。

夜が寂しくなるたび、
私は詩を書く。

過ぎてきた日々を思い出し、

小さく笑って、

ひとつの言葉を残す。

人は、
浪漫を失ってはいけない。

投稿者

福岡県

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