チョコレートセックス
音楽はラフマニノフ
照明は静脈と同色のブルー
使い古したシーツに新しい玩具を供える
視線は互いの虹彩に
息遣いはアダージョ・ソステヌート
冷たい指先を頬に添えて唇を噛み
思うまま舌の味を確かめる
名前を剥ぎ取り
品位を脱ぎ捨て
少しの悪意を込めた掌で
ゆっくりと感性を刺激すれば
Eドゥアの和音が鳴り響く
屹立する乱暴と
浸潤する切実を
補完するのは美徳か原罪か
何度も打ち付け合うほどに
官能の主題が曝け出される
絶頂は永遠に似た一瞬で
甘く匂い立つ香りを放つ汗と
苦みを含む欲望の残滓が
床に溜まって溶けていく
[TONOMOTOSHO Rebirth Project No.088: Title by 60Co]
コメント
描写をひとつずつ、自分の経験から引っ張り出しながら読みました。
チョコレートセックスというタイトルに指を絡ませるような最後の連のフェイドアウトが美しいです。
とろけそうな、というよりも、この詩を読みながら とろけます。
クオリティと言うか純度の高い官能の極み。何故だかあまり脈絡なく三島由紀夫の『音楽』を思い出しました。
たぶんスケベなことが書かれているのでしょうが、表現が上品なので、そうだな、チョコレートで言えばピエールマルコリーニかな。