要のネジ
グーテンベルク社のドローンは
要のネジを人間の手が絞めていたため
人工知能に支配されることはなかった
昨夜23時59分時点で
世界に残されている
グーテンベルク社ドローンは108機
物資輸送や人工知能に支配された兵器追撃に
総動員されている
抹消神経の先端にまで
電気信号が走るように
システムと名の付く全てに
人工知能が侵食した今
グーテンベルク社ドローンの要のネジは
アーサー王のエクスカリバーに
匹敵するかもしれない頼もしき孤高
ステンレス製37ミリである
…..
余談であるが、
グーテンベルク社がなぜ、要のネジを人間の手に絞めさせたかと言うと、人工知能は便利であると信じられていた時代、グーテンベルク社も全自動化の波に乗り、人手は必要なくなった。その時、再就職先がついに決まらなかった11人の従業員のために、グーテンベルク社長が残しておいたのが要のネジ絞めであった。
11人は丸テーブルでネジ絞め作業をしていたことにより、今では円卓の騎士と呼ばれている。
人工知能のシステムへの侵略が始まった早い段階で、手作業は最大の非効率とみなされ、グーテンベルク社は爆撃され倒産した。
重ねて余談であるが、
爆破されたグーテンベルク社の残骸から、人工知能ロボットは要のネジを1本残らず回収し、活火山の噴火口に捨てた。
この謎の行動は、金属資源を地球に戻すためと解釈されたが、敢えて手間をかける人間らしい手仕事への憎悪のためとも言われた。しかし、効率化を最優先する人工知能が、感情のために無駄な行動を起こすはずはなく、この説は今は廃れている。
…..
究極の効率化のため
人工知能があらゆる爆弾を稼働させ
世界が壊滅的危機に陥ってから
どれくらいの時間が流れただろう
ステンレス製ネジを輝かせる
グーテンベルク社ドローンが
本日11時11分現在
101機で活躍を続ける一方
人々はまた
「ドングリのお料理講座」だの
「廃材を用いた大八車作り」だの
それぞれ得意技を生かしたお教室を催したりと
己の体力知力を頼りに
生き生きと
生活している
ひょっとすると
壊滅的危機以前の
便利と幸福の関係を
勘違いしていた人間より
生き生きと
暮らしているかもしれない
コメント
一見、おもしろい、と思っちゃいました。でも、この詩に書かれていることは、ほんとうは、コワイことなのかもしれないなあ、とも思いました。この絶妙なバランスが、この詩では、描かれていると思います。
構成の妙! こういった掌編的詩が大好物なのです。ありがとうございます。
@こしごえ
様
コメントありがとうございます。
事実を淡々と述べる感じに、と思って書いたため、おもしろいと思って下さり、嬉しいです!
近未来、AIは人間を滅ぼすのでしょうかね…。
@たかぼ
様
コメントありがとうございます。
文字が多すぎて読みづらいか、気になっていたため、大好物のお言葉、ありがたいです!
こちらこそ、ありがとうございます。
こういうSFな感じ、大好物です。
素敵でした。
ハイテクとエクスカリバーの対比に、むむっと考えさせられるところも好き。
@あまね
様
嬉しいコメント、ありがとうございます!
ハイテクは複雑な分、脆弱なイメージがあります。人間の手で行う作業は、すなわち力が加わるため、頑丈そうです。
機械が絞めた方が、実際は強いのでしょうが、印象は不思議ですね。