偏執ポリリズム

初めて意識されるペリドット
さよならは告げない
別の場所、次の場所へ
水晶もブラックオニキスも
今は静かにターコイズブルーの海
元の場所は増え続ける
ただそれを知っている
輝きもそのままである

消えることがない
音は昔からずっと鳴っている
お気に入りのルーツミュージック
アンビエントなテクノに
ドラムンベースが差し込まれる
どこからともなくケチャやガムランが割り込んでくる
また去って行く
水の音 コシチャイム
パダニサ シタール
倍音に身を委ねる

トップは爽やかだが内に邪悪さを隠し持つ
グラースで調香されたハイチ産のベチバーがベースで漂う
シャトル織機の音の中
誰にも聴かれることのない言葉
ひとり、つぶやき、ささやく
かき消されるほどに素直になる
ベンタイルとツイードが身を包む
古き良き登山家に想いを馳せる

革の匂いが充満したような部屋で
柔らかな触感が脳を刺激するが
血流は砂時計のように脳をお留守にする
指先から、耳もとから、匂いまで
ここにしかない濃密な空間を閉じ込める
夜が白んでもカーテンは開けない

ある日突然結論だけが降って来る

僕は
君に
最高の
解放を
あげる

互いが解き放たれた関係は
時に醜く 時に美しい
その品格は自分が決める
今までもこれからも
優劣も順序もステップもない
僕はただ生まれくるものに水を遣り
隷属したり 隷属させたり
君を失い続けて生きていくのです

投稿者

千葉県

コメント

  1. この詩の、幾重にも折り重なっている調べが、心地好く、こころに響いて来ました。

    古き良き登山家に想いを馳せる

    というところが、
    あぶくもさんらしいなあ、と思います。

    そして、

    優劣も順序もステップもない
    僕はただ生まれくるものに水を遣り
    隷属したり 隷属させたり
    君を失い続けて生きていくのです

    という最後の方。
    微妙な関係性を踏まえた上での、のっぴきならない 悲しみを感じます。
    でも、「生きていくのです」という、この詩の、終わり方に、ある種の 安心感も覚えます。

  2. 各連で多種多様な要素が鳴っている感じです。
    石、音、香、布、匂、シャトルノーツと香りのノートがかかっているのかなぁ。後は作者の解説を楽しみに待ちたいと思います。
    最終連の情感がかっこいいです。特にラスト2行。

  3. 視覚、聴覚、嗅覚、触覚はあるけど味覚がないのは、食べるという泥臭い部分を捨て去りもっとスピリチュアルな高みに到達しているのでしょうか。でてくる物質も洗練されているし。

    それともどれほど美しい石に囲まれ、心地よい音楽を聴き、上質なテキスタイルを身にまとっていても、舌の上には何も味が残らない。それは最後に語られるように満たされることのない宿命のようなものなのでしょうか。

  4. なんだか意味深ですね。最後だけ読むと切ない。

  5. @こしごえ
    さん、コメントありがとうございます。
    「微妙な関係性を踏まえた上での、のっぴきならない 悲しみ」
    的確に表現してくださったようで安堵します。

  6. @たちばなまこと
    さん、コメントありがとうございます。
    解説になるかどうかわかりませんが、触れて頂いた最終連やラスト2行はポリアモリーの絶望感みたいなものを表現したかったものです。

  7. @王殺し
    さん、コメントありがとうございます。
    おっしゃるとおり味覚が削がれているのは、この詩に味覚を入れると身も蓋もなくなると言いますか、何だかとってもメタボなものになりそうだなとの危惧から触れませんでした。実際は味覚のポリリズムは大好きなんですけどー

  8. @花巻まりか
    さん、コメントありがとうございます。
    これは私にとっては切実かつ最後から最後まで切ないものを書いたつもりの詩なのです…

  9. 貴石たちのきらめきと、ずっと一緒に流れていく音楽を聴いているようでした。
    どの連も情感に溢れていて引き込まれます。

  10. 黒雲母を想いました。
    読めて良かったです。

  11. @あまね
    さん、コメントありがとうございます。
    各連に情感を感じてもらえて嬉しいです。

  12. @wc.
    さん、コメントありがとうございます。
    鉱物ですねー。読めて良かったって言ってもらえるのってありがたいことです!

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