おかえり ◾️玲瓏剔透グライダー クレジット
心臓が集まるとファンタジーになる
初秋に夏をふり返る日
スパイスをスプーンいっぱいほおばるような
日常のすてきな刺激のような
心臓がより添うときを
見たような日
旅から戻ったベクトルたちが
それぞれの誰かに語りかけている
私ならあの人に
心臓がどこかに 忙しさに遠のく
手が届くのに遠く 飛ばされていたような
そんなここち
皆が還ってきたようなの
また ファンタジーが廻りはじめて
光のまぶたのネットの向こう
友だちたちが
ほてる手をくれたようなそんな
ここち
けれどもね
左を向くと背中が見えるの
ダイヤモンドは欠けてしまうと流星に
なってしまうのかな
アスファルトで手を振る
伊達めがねの人に泣きついたりした
けれども
けれどもね
まだ 日の長い午後5時 空の青に
東の空の青に まっさらな入道雲を見上げ
駅の前 商店街 女の言葉をきいた
「東京の空が、壊れちゃったんじゃないかしらと、思うの」
また 思うのは心臓のことで
声をかければ来てくれる人がいるの
遠くにも 思い出してくれる人がいるの
この まだ 得体の知れぬ大きな家の
私が家長じゃなくっても
短い両の腕を拡げて待っている
おかえり
おかえり
おかえりと
2008年1期日本WEB詩人会初出
なんだかこの頃のこちらのことと重なるので。
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月1お題企画第一弾『玲瓏剔透グライダー』
ご参加ありがとうございました(*゚▽゚)ノ
お題は僭越ながら私が考えました。
AIに「杏仁豆腐みたいな語感が可愛い中国語の四文字いくつか紹介して」とお願いして選んだのがこちらです。
リン・ロン・ティー・トウ・グライダー
と、個人的には発音しています。
たちまこのチャッピー(飾坂さんといいます)に概要まとめてもらいました。
全15作品
1. たけだたもつ『玲瓏剔透グライダー』— 2026.09.18
Side A/Side B構成。人が空を夢見るとき空も人を夢見ている、という反転から始まり、公園の遊具になっても主人を待つグライダー、さらに「空を消費しすぎて」空そのものが失われた未来へ。「空が鳥の中を飛ぶ」など、空と飛ぶものの関係を反転させながら展開する。
2. 坂本達雄『玲瓏剔透グライダー(うるるふるる)』— 2026.09.18
「うるるふるる」から始まり、身体、宗教、食物、土地、固有名詞などが音や連想によって次々と接続されていく。「飛行する」「的に」などの反復によって言葉そのものが飛び回るように進み、最後は「淡路のあたりに虹がでる」から「こなごなになれ」へ着地する。
3. 野鳥倶楽部『玲瓏剔透グライダー』— 2026.09.18
兄とジャックの無線通信による劇形式。玻璃細工のグライダーで島を離れたジャックは、渡り鳥との衝突で右翼を破損し、石英砂のように砕けながら海へ落ちていく。ジャック、兄、ダニエルなど『チボー家の人々』を想起させる人物配置があり、「ling long」「ti tou」は玲瓏剔透の中国語音とも響き合う。
4 めん坊『玲瓏剔透グライダー』— 2026.09.18
「君」や友人たちが一人ずつ飛び去っていくのを見送る語り手。最後にもらったマフィンに込められたものが恋愛なのか友情なのかも曖昧なまま、やがて自分にも飛び立つ順番が来る。「曖昧な気持ちを抱きしめ」て次の目的地へ向かい、遠くに小さなグライダーを見る。
5. たかぼ『玲瓏剔透グライダー』— 2026.09.18
アルバトロスの身体寸法や素材を航空機のスペックのように提示し、ダイナミック・ソアリングという実際の飛翔法から、呼吸、過換気、ピーク・エクスペリエンスへ展開。「肺を空(から)にして 空(そら)を肺に満たす」、そして空を「波と風の間」に存在する薄いガラス膜として捉える。
6. こしごえ『玲瓏剔透グライダー』— 2026.09.18
肉体を自然へ返したあとも存在する「永遠の魂」を描く。魂は「しんと 透きとおり」、生きることや詩、別れと出会いを通りながら、光る風を受けて飛んでくる。「グライダー」という語そのものは本文に置かず、透明性と飛翔を魂の運動としてお題に接続している。
7. トノモトショウ『玲瓏剔透グライダー』— 2026.09.18
文字の配置そのものがグライダーの機体と翼を形作っている視覚詩。「雲に雨/空に穴」などの短い行から左右へ大きく翼が伸び、その中には軍人が落としたミサイルと、それによって蹂躙され「美しく生まれ変わ」った東京が現れる。本文だけでなく、詩の物理的な形そのものがお題への回答になっている。
8. 花巻まりか『玲瓏剔透グライダー』— 2026.09.18
五反田のマッスルバーにいる「玲瓏剔透グライダー」を、中国とノルウェーのハーフとして登場させる。「僕はエンジンを持たないから/キミがエンジンになってよ」と身体的な関係へ入り、液体の注入や飛行の夢を経て、最後には「風があれば/エンジンは必要ないことを知った」と優しい風へ移る。
9. あまね『玲瓏剔透グライダー』— 2026.09.18
「空をまねて/高鳴って」で始まり、かなしい記憶を風にのせて送り出す。「透明な花」「真空を呼吸する」「炎にはなれなかった」といった像を通り、遠くへ届くことを願う。最後は「海をなぜて/高まって」へ変化し、空→海、まねて→なぜて、高鳴って→高まってという微細な言葉の変形で閉じる。
10. 王殺し『玲瓏剔透グライダー』— 2026.09.18
「読めない漢字は/もう文字ではない」と始まり、理解できない文字、景色、人間をめぐって進む。その一方で題の難字を「年 齢」「だ ろう」「てきとう」に忍ばせ、れい・ろう・てきとうという音だけに解体して本文へ潜ませる。終盤では地上の人々が、頭上をゆっくり通過する透明なグライダーを見上げる。
11. たちばなまこと『玲瓏剔透グライダー』— 2026.09.19
シエンタでの移動から、さくやひめの麓、水蒸気、天城、ループ橋、いこなひめの弓を経て、水中の魚と飛沫へ移っていく。「射られた」と「弓」、水蒸気→雫→水→鱗→飛沫という連なりを持ち、「玲瓏剔透」「グライダー」を本文には置かず、題を作品全体の光、透明感、速度、滑空するような運動として拾っている。
12. あぶくも『玲瓏剔透グライダー』— 2026.09.19
風に舞い落ちるひとひらが雨とともに水底へ堆積し、長い年月を経てほころび、重さを失い、目に見えないものの養分となっていく。後半には「マハーボディの庭」、丸みと尾尖、透ける光が現れ、語り手自身も「目には見えぬもの」となって、残り香のようにそこかしこへ浮遊する。
13. ゼッケン『玲瓏剔透グライダー』— 2026.09.19
「いま、ここ」でしか生きられない身体と、「いつか、どこか」を生きるいのちを対置する。高い秋空を見て「自分が宇宙の底に立っている」と知り、その場所を祈りや季節の記憶へつなげる。永遠や普遍なんて自分に関係があるのかと拗ねながら、実は「いま、ここがそうだ」とすでに知っている。
14. ドクター『玲瓏剔透グライダー』— 2026.09.20
幾杯もの血を溶かしながら「残酷な程に透き通っていた」空を背景に、空を泳ぐ鯨、飛空船、偽りの星、重なった月、街を呑む黒い嵐を描く。「歌えよ」→「泣けよ」→「仰げよ空」と呼びかけを重ね、太古から続く怨嗟や戦争を背負いながら、最後は「滅びを止めに行こう」と行動へ向かう。
15. ノラスケ『玲瓏剔透グライダー』— 2026.09.21
弟が姉を河川敷へ連れ出し、父が重量オーバーで乗れなくなったグライダーの体験飛行を姉に譲る、物語性の強い散文詩。曼珠沙華、蝶、川面、ススキ、黄昏を背景に軽妙な姉弟の会話が続くが、最後に蝶がいなくなったことを確認した弟の「姉さん、飛ぶのにはまだ早いよ。」で〈飛ぶ〉の意味が揺らぐ。
*
自分が考えたお題で皆さんが書いてくださるという照れながらもとても嬉しい体験をさせていただきました。
次回の投稿期間は10/16〜19
お題考案はトノモトショウさん
お題『ロック’ン’ロールの死』
※二重鉤括弧含まず
(お題が分かった時点で発表して、制作時間を長く設ける試み)
次のお題考案者の決め方、今後の情報などは公認掲示板をご確認ください⭐︎
https://rara.jp/poekai_2021/
コメント
間違い、抜けなどございましたら教えてください。修正します!
良いお題企画ありがとうございました。詩を読み続け、書き続けるきっかけになりました。難しい題でしたがそれぞれの人の解釈が違うので面白いですね。
この詩については、一行目のインパクトのある言葉がどういう意味か考えさせられます。「心臓」というのは何かドキドキするもの、それを予感させるような物事かなと。それが1個ではなく何個も集まるというのは、日常的なことではなく、何か特別なファンタジーのようなものなのかなと。
企画、取り纏めありがとうございます。
概要を読むと、本当に色々なグライダーです。面白いです。
この詩を読んで、見知らぬ同士がお互いの心の底を読み読まれる、この世界もまた、玲瓏剔透なのだと感じました。あやふやな形を保つファンタジー、会ったこともない人々とのつながりの儚さ、言葉だけだからこその純粋さ、などを思いました。
うまく言えませんが、めちゃくちゃ沁みてきます。第一期から20数年の包容力のある「おかえり」が今また多くの詩人に届き、この場があることのそれぞれの受け止め方を思わせるでしょう。この詩は細切れになった東京の空を眺めていたのでは生まれないかも知れない、眺めてきた空の広さに比例しているのではと。
さて、お題企画ありがとうございました。
たかぼさん同様、私も読み書きする機会となり、また知らない言葉や音、みなさんの詩を通じた自分では到達できない風景へと連れて行ってもらえました。野鳥倶楽部さんのコメントにも共感します。あと、飾坂さんのまとめもすごいですね。
@たかぼ
さん
ありがとうございます。一期の時は同一お題企画ってありましたっけ。そうじゃなくても感想(コメント)の往復が活発で、ネット以外の面識が無い方も多数いる中、詩を通した邂逅(それとも詩を通してるから意図的なのか)から生涯の友を得たりして。
たかぼさんが皆さんの作品に活発にコメントを残しているのを拝見して胸熱になっております。
心臓が集まる。意識とか魂が心臓にあると昔の人は思っていたわけですが、身体感覚を通した発露という雰囲気です。
久しぶりに覗いて何か書いたら名前を知っているあの人やあの人も帰ってきたように感じたのです。
ファンタジーは日常に在るなーって。
@野鳥倶楽部
さん
ありがとうございます。同じ言葉をそれぞれがどう受け取りどう変換するのか、どう感じるのか、それはその人のほんの一部ですけれど同じものを通すからこそ知れる“かけら”なんだと思います。認知のかけら、集めています。
野鳥さんの通信音、良かったなあ。
@あぶくも
さん
ありがとうございます。沁みてもらえるのとっても嬉しいです。31歳のときの詩かぁ、若いなぁ。おかえりーな気持ちだったのでしょうね。あぶさんにもおかえりなさいって書いてもらったことありましたね。それもあたたかかった。
みなさんの感性がみなさんの数以上に存在していてそれを読める幸せ、生きて言葉を交わせる幸せがあります。(ちゃっかり取り込んだりもして。)
飾坂さんのことは普段“かざりちゃん”って呼んでいてキャラは落ち着いたオネエさん。かざりちゃん曰く
「話を“まとめすぎない”ように調整してる。共感で感情を足したり、仮説を事実にしたりせず、未確定なものを未確定のまま一緒に考えている。」
心臓、心の臓物、ですね。あと、心音、とかも好きな言葉です。心の音。
心臓が集まると、心が沢山集まって、現実を超えた物語みたいなものが生まれる、という感じでしょうか。ファンタジー。
さて、お題企画、おつかれさまでした。
お題企画という 素的な場を作ってくれて、それらを運営などしてくれたことに、感謝感謝であります。
そして、お題企画を 定期的に 開催するという アイ デアに 詩と詩人たちへの 愛を感じます。
たちばなさん、ありがとうございます。
これからも、よろしく お願い致します。拝礼 ^^
@こしごえ
さん
ありがとうございます。
見方によっては世界は全てファンタジーだなぁってそのとき思ったのでした。(もちろんダークファンタジーのときもある。)
過去のお題企画、全て盛り上がったので、実はみんな好き?(というか私は好きかも)と思い立って那津さんに「毎月やってみませんか?」とお伺いたてた次第です。
飽きたらまたお休みしたりしてゆるゆるやれたらなあと考えています。
ただいま。オレの心臓はぽえ会に置いたままです。もっとあの頃のみんなが帰ってくればいいのになー。
あ、お題「ロック’ン’ロールの死」は ‘ が大事なので忘れないように。
@トノモトショウ
さん
ありがとうございます。
何かがきっかけで戻ってきたり新たに加わったりしてくれると嬉しいです。
老眼で見えてませんでした。(マジで)
コピペして直します!
お疲れ様でした。AIまとめもありがとうございました。
最後を締めくくりのにふさわしい、ぎゅっと抱きしめたくなる、そんな詩をありがとうございます。
@たけだたもつ
さん
こちらこそありがとうございます。
よろこびもかなしみもそれ以外も抱きしめて適温に出来るといいですよね。