コピーする女

その女には
まるで表情というものがなかった
精巧な石の仮面を貼り付けて
ワイングラスに満たした誰かの血液を
ゆっくりと飲み干すように
彷徨う霊魂の一片を睨みながら
「現実が全て正しいわけじゃないんだよ」
呟く

――しかし それは私の言葉だった

乳房の上では
禍々しい蠍のタトゥーが横たわっている
ガラムの甘い香りを吐き出し
小さく震える素振りを見せた
悦楽を懐かしむように
機械的な告白を始めようとする
「愛する人を殺しても永遠なんて見えないから」
繰り返す

――しかし それは私の記憶だった

天井からぶら下がる影
腹部に熱を感じる直前の映像は
ソファに寝そべる悪魔の掌
ワイングラスに満たした誰かの血液が
当然の結末を蔑むように
コピーされた顔に滴り落ちる
「同じ人間が二人もいるなんて異常じゃない?」
笑う

――しかし それは私の

[TONOMOTOSHO Rebirth Project No.019: Title by オレンヂSODA]

投稿者

大阪府

コメント

  1. この詩の、各連の表現に 現実の味がして魂がおもしろがるのを感じます。
    「」内のセリフも好きです。
    最終行の寸止めで余韻が響きます。

  2. 女性にコピーをやらせるのはセクハラですか? パワハラですか?

  3. この摩訶不思議系の世界観、好きです。

  4. 短編ホラー映画のようでした。

  5. この詩、もう少し膨らませていったら、珠玉の掌編ホラー小説になりそうです。「愛する人を殺しても永遠なんて見えないから」。…いいですね、このセリフ。

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