美術館

僕には感受性が足りない
美術館ではいつもそう感じる
だけど今日も美術館に行く

上野でMOMAの名作展があった
マグリットの雲とゴッホの空は好きだ
それ以外はよくわからない

感受性の強そうな女の子の瞳が大好きだ
そんな人を美術館で見つけるのは得意だ
あと偽物の瞳を見つけるのはもっと得意だ

ダリの「記憶の固執」の前の人だかりが一番すごい
さぞかし髭をピンと立てて顎を突き出していることだろう
今日はもう「記憶の固執」にさえ固執しない
とろけた時計も蟻んこもシュールな夢も忘れ去られたカナブン
首輪をつけられたまま死ぬまで飛んでいる

極端に個性をそぎ落として感情を排除した
そんなアートの前で
無理に意味を読み取ろうとしている人
無意味が意味を産んで
没個性が個性的だったりするんだろう

マティスのものも結構あった
そういえばシドニーで会ったマティス好きの女の子
マティスって名前の音楽家の卵に恋してたなぁ

ミロだったかピカソだったかセザンヌだったか
その絵の前で連れてこられた風な男が言う
「これ偽物でもいいから家にほしいね」
パーティみたいに綺麗な格好をした女が言う
「そうねでも本物がほしい」

人を混乱させるだけのクソッタレのアート
腹を掻き切ってキャンバスの上にすべてをならべたら
処女作かつ遺作としてそこに置いてくれるかい

デュシャンは椅子の上に車輪をのっけていた
永遠の空回りを笑う
一生この場でこぎ続ける決意を敬う
しかし車輪ってスポークなんか結構精巧に張り巡らされてて綺麗

感受性の足りない僕にとって
絶大なアートと自分の間には
魅惑的な女の子をサンドするのがよい
深い瞳とその先の絵と胸や指先のフォルムと同時に
斜め後ろから観るのがよい

僕がアートの前で立ち止まっているのは
その構図を待っているのだ
自分には見えないものが
見えているかもしれないという焦燥感がよい

自分の感受性なんてそんなもの
そう思ったとき見えてきた

投稿者

千葉県

コメント

  1. エッセイのようでもあるけど、読み込むとなかなか的確な美術論で、もっと読み込むとそこにはあぶくもさん独自の視点で切り取られた詩心あふれる極上の詩であることに気付かされる。若い頃はオレもよく色々観に行ったことを思い出します。魅惑的な女の子と一緒に。

  2. 俺も芸術は全く解りません。ベタにフェルメールが好きです。あとはダリとかマグリットとか。^_^;

  3. 不感症なはずなのに、普通に詳しくて、デュシャンに対しての考察も的外れでないと思うし、自分の感性に対して謙虚だと思いました。

  4. 私は美術館が大好物なので楽しく読めました。

  5. トノモトショウさん、ありがとうございます。読み込んでもらえて嬉しいです。
    魅惑的な女の子、良いよね〜(^^)

  6. BENIさん、ありがとうございます。
    僕も自分が知ってるものしか知りません。
    (って当たり前か、変な日本語だな)
    フェルメールは『真珠の耳飾りの少女』くらいしか知らないなぁ、、、。

  7. ティモさん、ありがとうございます。
    デュシャンはね、なんか好きなんす。
    便器で泉とかね、最高だわね。

  8. たかぼさん、ありがとうございます。
    楽しんでもらえて良かったです。
    これいつ書いたんだろうと思って、上野のMOMA名作展って今調べてみたら、2001年でした、びっくり!!
    https://www.ueno-mori.org/special/moma/index.html

  9. 3連目とても好きです。
    美術館は絵をさらっと鑑賞して、展覧会特別企画ショップにとても時間をかける派です。

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