Trio

恋はいつだってTrioだ
焦がれ合うことに飢えていつの間にか
夜な夜な涙の川に袖を濡らすような
古典文学のやり方に憧れてるんだ
かたく契りを交わす相手を探すこれが
はじまりか
またはじまりか

先輩と地下街の珈琲屋さんに通い詰めたこと
飲み会で指をからませて手を繋いだこと
そっけない彼氏の相談をやめて一晩をゆだねたこと
淡々と伝えて
ひととき女の人を拾った話をされて
お互い様じゃんとか言って
じゃ 別れよっかって言って
電話越しに泣かれて
ひとの心はうつろいやすく なんて
ことば 知っているかい揺らがない真心があれば
こんな最後にはならなかったなんて
どこかで覚えた安い台詞を耳に刺したことも
初めての朝眩しい雪解けの街を円山の動物園まで歩いたことも
小樽の海までの線路沿いを電車すれすれの風圧で浮いちゃったことも
詩なんかにして読ませちゃったりしてさ
焦がれ合っていたから馬鹿にされなかったけど
終わりには笑っていたんだろうな
冷めていったんだろうな

ゲームは嫌いだよ
いつも好きな子を掻っ攫うからさ
珈琲屋でひとり詩なんか書いている自分に酔っているからさ
好きな子がみんな詩でも書いてくれたらいいのにな
詩なんかなんて馬鹿にされない世界線に生きられたらいいのにな

好きな子とのはじめてはいけないってまた言われちゃって
誰かのあたたかいものでいけたことがないなんて
たいてい信じてもらえないからもう言わない
冷めた重なりと焦がれはじめた重なりにからだを重ねて
交差する夜はいつも栗の花の匂いがする
吐き出したくなるえぐみをこらえて
好きだからこんなことするんだよ
好きだから飲み込むんだよ
焦がれ合いが続くように
本当のために白濁の嘘を塗りたくるように
                                                           

投稿者

東京都

コメント

  1. あぶくもさんの『いくつもの夜を超えて』という作品に付いているハッシュタグより。

    #万年アオハル
    #中2縛り
    #あなたは何歳
    #何周イケる
    『いくつもの夜を超えて』超素敵な詩なので是非。

  2. 好きだから に何もかもがあるような感じを受けました。
    そして、本当のために という思いと言葉に力を感じます。

  3. 飲み込んでくれるのは本当に嬉しいです。

  4. 俺は、ぺ!って吐き出されたことあります、その後何かが終わりました。
    確かに、夏目漱石のこころも、ノルウェーの森も、トリオだわ。

  5. 焦がれ合うって表現いいですね。
    焦がれたいし、焦がれられたいなぁ。
    そして、栗の花の嚥下な。え?飲んじゃったの?って、あの悪いことさせちゃった感が忘れられないなぁ。
    trioの難しさは、two’s company, three’s a crowdって言葉に表されてる気がするって関係ありそでなさそなことが頭をよぎりました。
    詩の最終行、とても好きです。
    それに、ハッシュタグ使ってくれて嬉しいです、ありがとう!

  6. 愛されている、と確認させてくれる行為は幸せ以外の何物でもありません。
    幸せ、どこで失くしちゃったかなぁ…。

  7. 好きだからそんなことするんだよね。
    好きってすごいよな。
    ”好きな子とのはじめてはいけない”って、ああって思ったけど読み間違えてるのかもしれない。

  8. @こしごえ
    さん。
    滑稽に見えても全てのベクトルの目標到達点は本当のために、なんですよね。
    自分のことも周りのことも許そうって思います。

  9. @トノモトショウ
    さん
    そうなんだろうなあ。無駄じゃなかったと思いたい。そう教えてくれた人もいました。

  10. @timoleon
    さん
    きっと悲しむだろうからと飲み込むんですけど、失敗した場合はせめて謝ります。
    トリオの方が話が盛り上がりますよねー。
    もしくは障害物がある状況とか。

  11. @あぶくも
    さん
    焦がれ合う期間は脳の仕組みで短くて、2年半だったか。(焦がれ合っている内に子どもを作るように)長く付き合った恋人が破局するのはそのせいなんですよね。
    詩の最後褒めてくださって嬉しいです。
    嘘つかない人っているのかなあ。

    申し訳なくなる?なんて謙虚な……!

  12. @BENI
    さん
    注いだ分返ってくるといいのになあ、と思うわたしはまだまだ青いですね。
    しあわせは屈んだりジャンプしたりいつもと違うルートで過ごしたりするとそこかしこにありますよー。

  13. @王殺し
    さん
    好き、その感情を悪用する種類の方々もいらっしゃるので気をつけなくちゃですよね。
    好きな子とのはじめては何故いけないのでしょうか。逆におちこむ。

  14. たしかに、デュエットじゃなくてトリオかもしれませんね。もう一人は謎の存在であるところがいいのかも。

  15. 今だからこそ、書ける詩ですね。真っ只中にいたら、たぶん書けない。書けたとしても、こういうふうには書けないでしょう。白濁の嘘を塗りたくる…。どきりとしました。
    あぶくもさんのアオハルも泣きたくなりましたが、たちばなさんのアオハルも、ぐっときます。

  16. @babel-k
    さん もう1人が謎の存在、自分はすぐ身をひいちゃう性分ですが、燃える人もいるのですよね。小説じみていいのかもしれませんね。

  17. @長谷川 忍
    さん ほんとそうですね。今だから外側から書けます。本人はいたって純粋で真剣だったのでしょうが、恥ずかしくて目を背けたくなるアオハルです。供養でございます。

  18. なんだか昔の大火傷を思い出してしまったような、そんな読後感でした…。
    理想の崩壊。焦がれて焼かれて。嘘に嘘。喪失感。本当の姿形。
    色んなのがフラッシュバックした心地です。
    いつかこういった題材を詩にできたらなって思いました。(恋愛?いや、そんな単純でもないですよね、)
    たぶん、なにかが燃えているんですよね。

  19. @ぺけねこ
    さん。読んでくださりありがとうございます!
    確かに火傷っぽいですよね。表面は治っていますが深層はただれていそうな。
    若い頃は詩のかけらがたくさん転がってたり、激しく降ってきたりしましたので、こんなヒリヒリするものよく書いていました。痕があるから今になってまた書いちゃうのかも。

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