残像パレィド
油蝉が飛び散る熱い午後
白狐の楽隊が騒がしく通りすがる
突風は円環を描いて椿の花弁に止まり
軒先に垂れた氷柱は斑に影落とす
揺らめく陽炎の向こう側で
あの日消えた少女の背中が乱反射
赤鬼の啼き声に老人たちは夢想い
虚空を染める鳶の群れは今も昔も
砂煙に紛れて陰気な寸劇が始まる
蝸牛に焦れて因果は分裂し交わる
幻覚ではないが不確かな輪郭で
痩せた電柱が羅列される(点・点・点)
毬つく稚児の歯が欠ける(転・転・転)
逆光に裏返る闇の中では一人きり
喪失を予感した視線がすり抜け
永遠は静寂を取り残すばかり
舞い落ちた紙吹雪は美しくも寂しく
置き忘れた足跡と渇いた涙
嘘吐きな僕は
すっかり大人になってしまったのだ
[TONOMOTOSHO Rebirth Project No.074: Title by 安爾]
コメント
ヤマタツともイズミヤとも違う、あなただけの素敵なパレードでした。
トノモト版百鬼夜行は真昼の残像が裏返って闇なのでやはり夜行。
現と異界の境目くらいで、こういうパレィドを見てみたいです。5連目がいいですね。
喪失を予感した視線がすり抜け
永遠は静寂を取り残すばかり
舞い落ちた紙吹雪は美しくも寂しく
置き忘れた足跡と渇いた涙
明るいような暗いような不思議な感覚になりますね。夏の青春の陰で踊ってそうな不思議なリズムです。