朝の耳(ASAのASMR)

グワドゥングワドゥン
夜中に通った貨物列車の比較的低速な重低音の

スササススササス
布団の中で少しモゾモゾする時間の

ギーチュチュギーチュ
起き上がろうとして軋むベッドの

ジャッシャックジャッシャック
思い切って勢いよく開けるカーテンの

ルーザップルーザップ
光の次は風だと開ける窓のサッシの

サーシャーサーシャー
少し離れた国道を通る車のタイヤの摩擦の

スークップフートゥップスークップフートゥップ
鼻呼吸のみで10回ほど繰り返す深呼吸の

手摺りに手を滑らせながら階下へ

トイレのフラッシュレバーが短く鳴く

トーストにバターナイフが往復する

密閉された新しいジャムの瓶の缶蓋を開ける

コーヒー豆を挽く

大きめのマグカップにハンドドリップでゆっくりと滴る

新聞のページをめくる折る裏返す

歯磨きの小刻みな往復

髭剃りが髭を貪る

頬を撫でる

最近ご無沙汰のネクタイを締める

クロノグラフの螺子を巻く

タイトフィットな革靴に足入れする

蝋引きされた靴紐を手際よく結ぶ

玄関ドアのバーハンドルを押す

鍵穴に鍵を通して気持ち良く閉まる振動

小さく息を吸って吐きながら歩き出す

靴音

続く

靴音

投稿者

千葉県

コメント

  1. オリジナリティのある擬音を生むのってなかなか難しいけど、ちゃんとそれを想像できるのが素晴らしい。どうせならすべての動作にあぶくもさんなりの擬音をつけて欲しいなあ。

  2. この詩を読みながら楽しい気持ちがリズム良くわき上がってきます。
    朝の耳という題もいいし、この詩の朝の清々しさと さわやかさが伝わってきて心地好いです。

  3. @トノモトショウ
    さん、ありがとうございます。
    前半だけに擬音をつけて、後半は読者の頭で響く音を楽しんでもらえたら。実際、前半が呼び水となって後半は描写から音にしか意識が行かなくなるでしょう?という意図的な構成ですね(^^)

  4. @こしごえ
    さん、ありがとうございます。
    こしごえさんに、この聴覚主導の朝の空気感が伝わったようで何よりです。タイトルもお褒め頂き嬉しいです。

  5. ユニークな発想の詩ですね。擬音、…音には、独特のリズムがあります。肉感をとらえるリズムなのかもしれません。音楽にも似ている。私も、日常に潜む「音」に敏感でいたいと思いました。

  6. @長谷川 忍
    さん、ありがとうございます。
    日常に潜む「音」に敏感でいたいと、長谷川さんに思ってもらえるなんて、この詩も幸せですね。この詩では、音を記す試みを前半後半2種類に分けてやってみました。

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