地獄の季節

ガソリンが作る虹
背景は半透明ビニールの膜
鉄筋コンクリートが呻き声を上げる朝は
何処も彼処も冷たい風ばかり
もちろん貴方のことは忘れてしまって
ハチミツの空から飛び降りてしまって
肺胞から伸びる美徳を掴みきれずにいた

季節は同じく巡るから
痛みは次第に消えるから
視界を遮るマネキン達の内臓を
ひとつひとつ 丁寧に飲み込んでしまおう か?

繊細な昼を積み上げた
街灯の下で涙を拭いた
素数を集めて湿った穴穴に入れた
これら一連の作業はカタルシスを生んだ
というのは冗談で

硬質な夜に潰された
靴下の先端が腫れた
電子を漂う群衆のモラルに貫かれた
これら一般の虚実がカタルシスを呼んだ
というのも冗談で

誰もが孤独に負けるから
貴方は矛盾に勝てるから
地獄の底で這いずる今こそ
ひとつふたつ 強引に抱き締めてしまおう か?

[TONOMOTOSHO Rebirth Project No.036: Title by 山田尚史]

投稿者

大阪府

コメント

  1. グランジーで膂力つよめの言葉をお腹に力入れながら追っていたら急に冗談で、と二連発で気を抜かれて、その直後この最終段落に胸ぐら掴まれてビンタ張られたんですが。ひどい仕打ちです。間に合いません。おかげさまでちゃんと喰らいました。

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