鯨は空を飛ぶ

空き瓶を散らしたような
碧い碧い空に
大きな影が浮かんだんです
そうして家々は
消えていったんです
紫の花が咲き誇り
翠の蔦が生えて
僕は縛り付けられた
鯨は知らん顔で
空を飛んでいました
瑪瑙のような瞳が輝いて

毎日が寒いんです
今日も雨だったんです
気づいたら空は晴れ渡り
辺りは青に染められ
とっても暖かくて
僕は目を閉じました
あの娘を思い浮かべて
そうして惚けていると
鯨が尾っぽを海面に打ち付けます
幾度も幾度も打ち付けて
波が溢れています
うねる美畝の中を
鯨は飛んでいました
身体には翠の藻が絡んでいて

鯨は空を飛びます
雲のように飛びます
死んだなら風が吹いてきて
ばらばらに弾け飛ぶんです
うねる青い波間に
紅い肉の破片が
ぷかりぷかり
浮かび
鯨は空を飛びます
死んでも空を飛びます

投稿者

奈良県

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