キス

わたしにやさしくするのは、
ピアノ曲、ややひとみをとじて、みすじの、
褶曲する地層の歌う、
わがままなひとみの木枯らしのキスをせよ、今夜は、
ウガヤフキアエズ、南方の砂浜の嵐を知らず、
みちのくのコントラバスは知られず、
包み隠される物語の主人公たちは、
チョコレート菓子の銀色のつつみ隠されず、
棟上げするこだわりの重みは、海風、そして潮風、
カタクチイワシの小さな嘆きと言う曲、
椰子殻の果物ナイフと言う歌曲、
とうせんぼうするボウダラと言う歌、
どうしてどれもわたしを泣かせるのだろう、
ひかりより、ひかりをもとめ、かがやく太陽の下へ、
ピアノは包帯を巻かれたままである、
さみしさの限りを尽くし、枯淡の沼また沼を徘徊する、
イトウのように、それを楽しみとする限り、
限りなき欲望の旗印、今夜も、
みずからの首をしめるようにして歌うカナリア、
それは本当の紙芝居のおじさんの語り、
交通システムはやがてパリの歩道を渡るでしょう、
ひとつの苦しみの反応する火花の、
気体のままに重金属の泪から始まる、
ジャングルからジャングルへと浮遊する言葉の、
クマンバチの羽の音はする、
泳ぎつづける脳から日焼けした彼の思考するもの、
水平飛行する機体からそれらは、むやみに、
ひどくおののき、鬼の首を取ったように、そしてあいまいに、
緊急事態であると言うのであるが、
君はすでに歴史の大道を見ているのである、
ヤマカガシの眼は赤く光り、とどまりつづける、
解剖する我の放心するは、このあたり、
華やかな、それぞれの道に、
咲いている、
鍛えられた真実の白い薔薇はウブスナの語る、
かぐわしい神秘の寝室をめぐり、
ドラゴンの爪、緋衣のひるがえり、
きわめられたこの音楽の世界、
そしてヒヨドリの叫ぶ声を聞け、
愛よりも大切である、
愛することよりも、キスするこころが、
闇の中よりこの指を呼び、
強く願うのは、あなたが、
世界のやすらぎのために、
このキスを受けること、
かぐわしい大地のための。

投稿者

岡山県

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