詩人たちの午後

ヤスリのようなものはいらない、
花々は波間をただよう、
けっして見たものを歌うのでもなく、
飲み込まれる塩水から、さようならを言う、
ハルキウから、夕暮れの田舎道へと、
たずさえたバイオリン、その絃までも、
〈たましい〉と言う曲、キンバリーの採掘場から、
聞こえて来たのは、秋の虫の声です、
ふしだらな詩人たちの声は、うらがえり、
山の清水の流れ出し、溢れ出てこの谷間の街へと、
昼食の時に、この街のビールを飲もうとする、
上品な模様の皿にのせられた、
ハムとチーズは、愛の名を重ねて、
唇を濡らす、
やわらかな愛情はやさしげな言葉をのせて、
今はなきことども、今は知られないことども、
それらも喉を駆け降りて行く、いくども、
語られないことどもは酔っている、
花は盛りに匂い、風は盛りに舞い上がる、
それではバイオリンを奏でましょう、
古きは「ロマンス」の歌、そして今も心に押し寄せる、
抵抗の歌、
立ち上がり「声」は高くして歌いましょう、
ひとびとは花の盛りに死んで行った、あの日、
ラウル・ラウルと叫びつつ、
だから今、ヤスリのようなものはいらない、
心から来るものは、ヤドリギのような午後を、
わたしのグラスにも、ついでください、もういちど、
肩を組み、悲しみはいらない、われらの午後、
遠く〈風車は合図する〉、
それもまた歌である、
新しい感覚する野辺に出て、
精神のこわばりをもはや捨てて、
午後である、風の吹く街々のひろげられたテーブル、
愛である、花は波間にただようから、
銀色の波は悲しみを捨てて、
果てしない午後の酔いのさなか、
見つめる花、樹々の葉は、
さらに泣く。

投稿者

岡山県

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