ピーチアンドリリー

約十五歳、イカリソウの白よりも
ライラックをこんもりと
パズルの盤を隠す、低く飛び去る雲を見上げ
コントロールするパリとアテネの間
象牙の帽子を乗せておくには、広すぎる老人のひたい
彼はそもそも自由に時間を手回しする
自動オルガン
退屈な午後の折りたたまれた物理法則から
水差しのゆれる影は、あるじの優雅な楽しみを奪う
テーブルの厳粛な花たち
そして細い茎をのぼりつつある、水分
サガンのようにボタンをはずし
胸のサンザシの棘をインドサイの耳にあずければ
胸のポケットに一輪の客土
厳格なロンド、ひまわりのロンド
うすむらさきの心理的まじないをしかけている
本のページにはさまれた小さな
刃先はいちずな腿のうえにおかれて
ほとんど、最果ての、オームの繰り返し
椅子から立ち上がり、わたしのそばに来て
約十五歳、はらりと髪は浸水する
ときに、言葉は、オーロラを呼び出す
広げられた野に充ちているのは、直立する野生の鹿ばかり
重たいカバンの小さな鍵穴に
昆虫たちの視線が集中する
カクテルの色は、野に充ちている
カリブ海の青という、さらにルリボシカミキリと言う
温度計のとがった先で、少女は「君は」と問い詰める
やさしい野菜だけのサラダで
唇をしめらせて
手の甲でふきとって
しばられて、堅い椅子に、凍り付く、春の野に
愛情のくくられて、すばらしい頬に・・・
約十五歳、下着は、春の空、
くらくらと、駱駝のように、空をゆく、
さびしいカクテルの色を惜しみながら
サーカスのブランコの人
タッチして、次の人に、炎のように燃えている
人間が燃えている
もしここで、少女の体に
火がつけば
ピーチアンドリリー。

投稿者

岡山県

コメント

  1. 美しい詩の世界と戯れていたいとおっしゃっていたように、フレッシュな花たち(少女、詩)と踊っているようで。
    胸もとで遠慮がちに拍手しています。
    結びの3行がとっても素敵。

  2. 少女たちばかりではなく、少年たちにも出て来てほしいのですが、そのためには、もっと冬が深くなる必要が、暖炉に火をいれるように、もっと薪を用意しなくては、モズが鳴きはじめましたか。するどく、感覚が。冬へと。

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