愛玩動物の顔をする
盛りの脚取りで迫る
飼い慣らすはずが
微量の薬を注がれる日々
美しかった水源の支配は忌み
永く澱んだ抑圧も奇異で
寝具の下から現れて
つま先から喉元へ
弁も立たない個体なので
午前3時に針を刺す

甘やかされたくて寄生を選ぶ
強く香りを封じながら
過ぎるメスの文字列を
無邪気を装ってちぎり捨てる
オスは老いても生殖できるし
メスの繁殖期は短くて
苦しみを募るばかり

集合住宅の金属ドアから
撒かれた傘
切られた記録
弱者になっても
国家に保護されても
網を辿ってしのび寄る
効いた色を確かめに
遺伝子の中にまで
個体が棲みついていた穴から
醸した果実が漂う
さようならを確実に
色とりどりの雫が
薬指から落ち続けるように
                                                        

投稿者

東京都

コメント

  1. 皆さんの詩へのコメントはよく読んでからゆっくりとさせてください。(今日は)

    初見の方は蠍の詩が並んでいてなんぞやとお思いでしょうが、こういう企画がありまして↓
    このサイトには掲示板が無いので、Twitterから引用します。

    ☆『蠍』の詩募集☆
    タイトル『蠍』で詩を書いて、読み合ったり語り合ったりして楽しみませんか。
    ◆開催場所: poet.jp
    日本WEB詩人会投稿欄にて
    ◆投稿期間:12/2(金)〜12/11(日)
    ◆参加方法:『蠍』を投稿するだけ

    これを機に新規会員登録も大歓迎です。
    ※発案は那津氏です。

  2. 蠍。蠍座の女。それとも女は総て蠍か? 生殖が終わるとオスを食べるメスもいるらしい。艶めかしいことです。この詩も艶めかしい。

  3. とくに2連から、男も女も 
    苦しみらしきものを秘めている・・?と想起しました。
    僕が敬う作家は生きるとは
    『おもくるしい = 面白くるしい』と云っています。
    話がそれたかな(いや多分、それてない(笑))

  4. 女の一生。いや、蠍と共存する男の一生。すご〜くゆっくり効いてくる神経毒のような怖さ、妖艶さを感じます。しかし、それこそが人生の妙味なのかも知れない。これはすごい詩だ。この企画、なるべく被らないように工夫したつもりでしたが、本文に「蠍」の文字を使わないアプローチ、、、被りました(^^)

  5. さすが、という他ない。
    けど、メス オス という表現にある種の冷たさというか冷静な目を感じます。
    この詩の(いい意味での)毒にやられました♪^-^)

  6. あれ?これ、オレが書いた?と思うほど、好きな文字列が並んでいてたまらんです。

  7. 絡新婦(女郎蜘蛛 じょろうぐも)という妖怪を連想しました。
    妖しくて 艶っぽくて 哀しくて とてつもなく怖い
    いつか妖怪詩のアンソロジーでも作ることがあったら参加しませんか?(笑)

  8. @たかぼ
    さん。たかぼさんに艶めかしいと書いてもらえるなんて光栄でございます。生殖って神秘であり神秘って艶めかしく瑞々しいですよね。そして赤ちゃんはとびきりかわいい。

  9. @服部剛
    さん。確かにー!おもくるしいです。
    簡単にくるっと表と裏が入れ替わるので割り切って心に余裕を持っていたいです。
    これは余裕がない詩だなーと自覚しています。へへ。

  10. @あぶくも
    さん。そうなんです、蠍、毒を使わない縛りで書きました。薬(=毒)は使っちゃいましたけれど。蠍という概念は嫌いじゃ無いのですが、不快な人物を思い浮かべていたら神経毒みたいな怖い感じにぃぃぃ!

  11. @こしごえ
    さん。さすがなんてそんなぁ、照れます〜。
    冷たさ、感じて頂けて報われます。あたたかさを強要される冷たさに怯えるように書きました。

  12. @トノモトショウ
    さん。バレた!
    ちょっとトノモトさんを意識したことは否めません。「好きな文字列」をありがとうございます。

  13. @nonya
    さん。
    “妖しくて 艶っぽくて 哀しくて とてつもなく怖い”というコメント、とても嬉しく、作者冥利に尽きます。特に哀しさは縦糸に織り込みました。
    アンソロジー、良いですねぇ(笑)

  14. 作者のコメント:
    決まったタイトルから詩を書くのに慣れない中、己を当事者すると書きやすいことから、蠍を概念として用い“抹消したい過去のあの出来事たち”に当てはめた。
    微量の毒を毎日刺してくるオスを振り解いてから20年近くになるが、たまにサーチなどの気配を感じて不快でしんどい。オスは何故過去のメスを美しく記録し、執着するのだろう。早々にテリトリーから去って欲しいものだ。

  15. @たちばなまこと
    さん。そうだったのですね。蠍が女性かと思ったのですが、男性だったのですね。男性はコレクション癖があるので(原始の時代獲物を獲ってきたオスがモテた名残か?)女性遍歴すらコレクションにしてしまうのではないでしょうか。一方女性の、過去の男性への執着のなさときたら……男性は最初の恋が初恋なのに、女性ときたら最後の恋が初恋なのですから。

  16. @たかぼ
    さん。
    “ 男性は最初の恋が初恋なのに、女性ときたら最後の恋が初恋なのですから”
    なんとかっこいい……。ほんとにかっこいい……。(語彙力皆無)
    そうですね、収集癖ありますよね。このオスのコレクションは暗殺したい!
    この個体だけ特別に二度と関わりたく無いだけで、良い思い出の個体も居ます。
    斉藤和義の『ずっと好きだった』みたいに誘われたら飲みに行っちゃうなーと夢想だけしています。

  17. たちまこさんは、その裏面にルックスからは思いもつかない毒を持っているのかもしれない。そうだったらほんとうに素敵な人ですけどw。

  18. 「国家」からは咀嚼しきれませんでした。
    何度も読んだのですよ。ここで国家かあ
    って入り込めなくて、「蠍」=国家だと
    なるほど、咀嚼できるかもしれません。

    蠍の死体は日本列島に思えてきました。

    沖縄のところが尻尾に思えてきました。

    live

  19. @babel-k
    さん。マイナスに作用する人もいればプラスに作用する人もいるので、babel-kさんはどちらでしょう。
    ルックスは褒めてくださっていると解釈していいですか?(笑)

  20. @たちばなまことさま
    私はたとえ皮肉であっても人を傷つけることを露骨に述べるような鈍感な人間ではないつもりです。ルックスは多く(100パーセントに近い)の人がそのように感じるであろう評価です。

  21. @babel-k
    さん。ありがとうございます。
    一見人懐っこく見えているなら嬉しいです!若い頃は怖そうって言われていたので(^-^)

  22. @足立らどみ
    さん。日本列島に!それはすてきな見方で嬉しいです。
    国家は、政府でも良かったんですけど、リアル過ぎて浮くなーと思い。国家でも浮いてたみたいで腕の無さを感じます。精進いたします。
    知人から国に保護される立場になったと聞いたものですから。ネットは最低限の生活に無くてはならないものになりましたね。

  23. @たちばなまことさま
    若い頃は誰でも血気盛んですからね。よくいう年齢を重ねて丸くなったということでしょう。いろいろ経験を積まれてどんどん優しい人になってください。でも、あまり優しすぎると舐められるかな?w

  24. @babel-k
    さん。どんどん優しい人にって、いいですね。舐められたら緩効性の毒打ち込んでおこうと思います。まあ、優し過ぎないので大丈夫。

  25. 午前3時に針を刺す/甘やかされたくて寄生を選ぶ/遺伝子の中にまで/個体が棲みついていた穴から/醸した果実が漂う
    上記のフレーズが効いていますね。
    毒、風刺を加え、…蠍、もとい人間が上手く描かれています。

  26. @長谷川 忍
    さん。元来口の悪い人間が書いているので毒も猛毒て風刺もきつくなります。
    効いてると感じてくださって嬉しいです。(にっこりガッツポーズ)

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