たそがれ堂

たそがれ堂

表通りから
少し奥に入る。

三叉路の手前

店は
白いカーテンで
仕切られ
中は見えない

というより
開いているのを
見たことがない。

何を売っているのかも
わからない。

たそがれ堂と書かれた
屋号だけ
青い暖簾の隅
窮屈そうに下がっている。

冬の夕の
鈍い陽ざしが
店のガラス窓の向こうで
ぽよよんと
反射する。

燗電池
人取り線香
万念筆のインク
ぞう金

源幸用紙
雌薬
倭ゴム
かまきりホイホイ
長谷川の詩集

こんぺなとう

のののコロッケ

無義焼酎も売っていたら
いいな

…などと
ぼんやり想像しつつ

三叉路の左
精肉店の脇を抜け
古い霊園に出た。

肉体も脱いじゃおう。

冬至はもう過ぎたが
日の暮れは早い。
心だけになって

しょっぱく
哲学的な頃合いだ。

投稿者

東京都

コメント

  1. たそがれ堂、不思議なお店?ですね。
    長谷川さんの自由な想像がすてきに漂う詩。
    そして、想像の後の方、味わい深くて好きです。
    しょっぱく
    哲学的な頃合いだ。
    なんともいい。

  2. 写真の映り込みが良い感じですね。
    暖簾をくぐったら、もう帰って来れない雰囲気がします。
    素敵な品を並べる、長谷川さんのニヤニヤが見えてきそうで
    思わずこちらまでニヤけてしまいました。

  3. @こしごえ
    こしごえさん、ちょっと、楽しんで書きました。
    こんなものが売っていたらいいなあ、という願望を込め、商品?をいろいろ選んでみたのですが…。
    のののコロッケ、美味しいですよ。
    ちょっと、哲学的な味かもです。(^^)

  4. こんなお店で幻想的なモノたちに囲まれて長谷川さんの詩集があるのはとてもイメージに合いますね。霊園からの、肉体も脱いじゃおう。がツボでした。

  5. @nonya
    nonyaさん、自宅の近所にあるお店です。ほんとうに開いているのを見たことがないのです。そこから想像を膨らませて書いてみました。…たしかに、暖簾をくぐったら、帰って来れないかも、です。

  6. @あぶくも
    あぶくもさん、時々、肉体を脱いじゃいます。すると、イケメンも美女もいなくなります。あるのは、心が、よいか、悪いか、それだけ。
    こういうお店で、長谷川の詩集を売ってくれたら、嬉しいかもです。(^^)

  7. 売っていたらいいなの品々、ぜんぶ欲しいです。
    ユーモアもあり詩の人柄もすてき肝心なところはエッジが効いてて大いに唸りました。

  8. @たちばなまこと
    たちばなさん、のののコロッケをおつまみにして、無義焼酎を飲むと、美味しいかもです。かまきりホイホイ、購入したいなあ…。

  9. 散歩をする詩人は肉体を脱いじゃっているひと時もあるのかも?しれませんね。

    源幸用紙と無義焼酎を、注文します。

  10. @服部剛
    服部さん、時々、肉体を脱ぎたくなることがあります。…肉体は、いろいろと面倒です。無義焼酎、美味しいですよね。(^^)

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