ルクソール

ルクソール

どんまい、君は星を見たかい
状況はかんばしくない
多くの船が帆を張り川面を行く
星空の永遠から、恒星の宿痾から
散乱するゼフィルス
定数は薄墨色の広場の衣
巨石を切り出す男達も
巨石を曳き出す君達も
もどれない図面の中のピラミドを
計画も計算も塩辛のビンの中身を
ロックだよ、俺達は皆、空白の大地を転がる
ジャングルの奥の方には人間に似たサル
キンを掘る男達も、照る炭の黒光りする
ロックだよ
月の軌道を思い描くことはできない
まして、川底の電気ウナギの気持ちなど
動物の死骸が浮いている、女の死体も
浮いている
これはわたしの過去を清算するために起きたこと
泥の中に沈むナイフ
この河の少し先では、レンガを干している
太陽のやつが熱いので
投げ上げるこの、出来立てのレンガは
霊廟を築き上げる赤い泥レンガは
骨はいつも誰かの骨で、そいつはロックだ
女は細い腰で、女は細い首で、女は
泥沼の底のウナギのように逃げる
砂漠の風土病の青いカゼをひいて
わたしなんかは
じっとりと汗ばんで、握り拳を堅くする
ヒョウの爪が幹にくいこむ時
尻尾の先まで電気が走る時
ピラミドは鏡の表面に満天の星を映す
飛んで来て、飛んで去る
この過去もこの未来も砂色の落第
手を離してノミを持つ手を離して
一巻の終わり
できあがれば次の現場が待っている
俺達は流れ続ける労働者だ
つくらなければならない巨大な核融合炉
どんまい、ハンマーは手から離れた
落ちる、現場は底なし
汗はあふれる
女の肌に。

投稿者

岡山県

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

コメントするためには、 ログイン してください。