私のいない七月

遠い現在を
見つめる
蜩の詩(うた)の響きは
空気を伝わり
仄かな光の耳に
届く
音速の視力です

幸せというものは ある意味では
なるものではない。
幸せというものがある
この幸せに
気付くことで幸せを思うのです
ふつうに呼吸が出来る幸せ
きれいな水を飲める幸せ
好きな存在とこの世界に存在出来る幸せ
気付けば
さまざまな幸せが身近にもある
幸せ

七月の夕暮方
蜩のかなかなかなかなかな
という愛の歌が澄み
西の空は蒼い。
現在私はどこにいるか

私のいない
七月に
蜩は愛の歌を歌っている
これでいいよ
私のいない七月が言う
私は幸せだったと
私のいない私も言う
今年も
七月になった

投稿者

コメント

  1. 確かに、なるものじゃ無いですね
    気づけるか
    が、重要です
    ひぐらしの喧騒が全てのシーンに導いてくれます

  2. @那津na2
    那津さん コメントありがとうございます。
    ああ、那津さんがこの詩の言いたいことの重要な一つを分かってくれて ありがたいです。ありがとうさま。
    その幸せについてのところは、ニュアンスを整えるのが私にとっては難しかった。なので那津さんがその趣旨を汲んでくれて分かってくれたことが とても嬉しいです!良かった。
    ふふ。個人的に、ひぐらしの歌声は虫の音の中で一番好きな歌声なんです。那津さんのこころに この詩のひぐらしの歌声が響いて良かったです。

  3. 蜩は風情がありますよね。最終連にかけて摩訶不思議さを醸し出しながら味わい深くなっていく気がします。

  4. @あぶくも
    あぶくもさん コメントありがとうございます。
    はい、そうなんですよねぇ蜩。蜩のあの歌声が何とも大好きなんです。
    うん、最終連はすこし推敲を繰り返しました。この詩の「私」というのは、架空の存在であったり、今は亡き次兄をイメージしたりね。
    ああ、あぶくもさんがこの詩を味わい深いと言ってくれて とても嬉しいです。ありがとうさま。

  5. 音速の視力、かっこいいフレーズ。
    アブラゼミの羽根は苦手です。
    かなかなの音色は好きです。

  6. @たちばなまこと
    たちばなさん コメントありがとうございます。
    音速の視力、という言葉は自然に出てきました。詩の流れのなかで生まれた言葉です。その言葉をかっこいいと言ってくれて ありがたいです。ありがとうさま。
    うん、セミに限らず虫全部が嫌いな方も居ますもんね。アブラゼミの翅は独特な模様してますよね。
    たちばなさんは、うん、かなかなの音色は好きとのこと。それは好きで良かった。かなかなの歌声が聞ける夏ごろが待ち遠しいです、楽しみ♪

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