ハコヤナギ
おお それは ハコヤナギの芽吹く頃だ
ガリラヤ湖の周囲の丘陵地帯
わたしの恋人はサンダルでゆく
美しいその髪は栗毛色
つんとすましてこちらを見る
その姿をカメラに収めて
古代の遺跡のもうくずれてしまって
砂と石とのまじりあったなにものでもない
おお それは あなたが手にすると
かぜとともにとびさるもの
あいしている このわずかな ときのなかの
ひかりとともに うしなわれていくもの
信仰という紙に書かれたものを
わたしはびりびりとやぶりながら
風にとばそう
ガリラヤ湖の丘のうえから
びりびりとこころはやぶれていく
さあ 恋人よ 美しい この世界
ハコヤナギは芽吹いている
くちづけをしよう
びりびりと信仰はとびちった
いきているわたしは
いきているあなたをあいする
そのよろこびの つかのまの あおぞら
あなたの胸には巨大な空洞があいていて
そこから 見えるのだ
芽吹きはじめた
ハコヤナギ。
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