春のうた

今日出会った雲は はじめ
こどもの龍のような形から
やがて小さなカニへとかわった
その横を巨大なクジラ雲が
ゆっくりと泳いでゆく

鼻をかすめる白梅の香りは
月のない夜でも
そこにいることを
そっと
しらせてくれる

その静かで清廉な語りかけを
わたしはいつも好ましく思う

今年も3月は突然春を連れてきて
ミモザをまばゆく彩りながら
モクレンたちを目覚めさせる

悲しみも喜びものみこんで

魔法のように
心にはなたれるのは
生き物たちの息吹

ほら 今年も

春のうたが
きこえる

投稿者

コメント

  1. コメント失礼致します。拝読させていただきまして
    第一連目に私にも雲が…みえてきました。

     鼻をかすめる白梅の香り
     月のない夜

    私は特に二連目の情景が好きです。

     その静かで清廉な語りかけを
     わたしはいつも好ましく思う

    すてき!!です。

     悲しみも喜びものみこんで

    春の、苦さ、せつなさ、儚さ、そこに躍動感もっと、
    さまざまな想いが浮かびました。
    そして六連目の三行が、とても効いていて最終連と
    タイトルが心にピタリと。吸い付くようにおさまるのです。

    草野様の作品を拝読させていただきますと、いつも…やさしい心持ちになれるのです。やわらかな言葉の表現が、とても美しいです。

  2. @リリー
    リリーさん、このたびはお読みくださった上に、
    私にはもったいないようなお言葉までかけていただき、
    本当にありがとうございます。
    リリーさんがそんな風に読んでくださって、とてもありがたく、
    そして心から嬉しく思いました。
    私は梅が大好きですので、
    リリーさんが2連目を気に入ってくださったことも嬉しいですし
    全体を通してこんなにも丁寧に読み取ってくださったことが、
    奇跡のように感じられました。
    そして「やさしい心持ちになれる」というお言葉も恐縮ではありますが、
    大変嬉しく、無常の喜びに感ぜられました。
    このたびはあたたかいお言葉の数々を、本当にありがとうございました。

  3. 悲しみも喜びものみこんで

    魔法のように
    心にはなたれるのは
    生き物たちの息吹

    この連たちが特に好きです。
    この詩は、春の生き物たちのいのちがあふれていく様子がとてもすてきに描かれていますね。
    私は雪国の豪雪地帯に住んでいますので、(雪国の春は遅くて、4月とか5月頃が春になります。大雪の年の残雪は6月頃とかまであります。今年の3月は5度位から10度前後で暖かくて雪解けが早くなって いいあんばいです)春を迎えると とっても解放的でよろこびに満ちるんです♪(^-^)
    昔ですが、梅(品種名(白梅の)月影と雲竜梅)の盆栽を育てていた時期があって、梅の花の香りを楽しみにしていたものです。なので、草野さんのこの詩の白梅の描写がリアルに感じられて心地好いです。
    題の 春のうた というの。「うた」をあえてひらがなにしているのもいいですね。歌とか詩とかにも受け取れる。
    草野さん、春にすてきな春のうたを届けてくれて、ありがとうさま♪☆(^-^)

  4. @こしごえ
    こしごえさん、このたびはお読みいただいた上に
    素敵なコメントとエピソードまでお寄せくださり、ありがとうございます。

    私の住む地方では、
    例年3月と共に本格的な春がやってくるのですが、
    こしごえさんのお住まいでは、
    まだ春の足音がきこえたところでしょうか。

    雪の多い場所に住んだ経験がないため、
    6月まで残雪があるということにも、
    とても驚きました!!
    けれどもきっとその分、
    春が来たときの喜びも大きくて、
    本当に晴れやかなのでしょうね!

    白梅の盆栽のお話もとても興味深くて、
    書いていただいた品種名を、思わず検索致しました。
    どちらも名前からしてとても素敵なのですが、
    特に雲竜梅がまさに「名は体を表す」でしたので、
    驚きました。 と同時に私もいつか盆梅にチャレンジしてみたいなぁという欲?が
    むくむくとわきました。

    そして拙作の「悲しみも喜びも~」からの一節を
    気に入っていただけたとのこと、お伝えいただきありがとうございます。
    たぶんこの詩の中で、一番表現したいテーマのような部分でしたので、
    特に嬉しく思いました。

    そしてタイトルの「うた」の部分も、
    「春のうたがきこえる」というフレーズが浮かんだ時、
    それが歌か詩か(はたまた唄か?)、
    自分でも判然としなかったため、ひらがな表記にしたのですが、
    そのことによって、そのどれにも受け取ってもらえる可能性がある、
    ということを教えていただけて、
    とてもありがたく、そして嬉しく思いました。

    このたびは、本当に素敵なコメントを
    ありがとうございました。

  5. 春の様々なことがらを感じられる良い作品ですね。何よりそれを感じている作者の視点と表現力が素晴らしいと思います。特に、「悲しみも喜びものみこんで」の一行が入ることで、自然とその中の一部としての我々人間、という世界観が効果的に表現されているように思いました。

  6. @あぶくも
    あぶくもさん、お読みくださった上に、コメントもお寄せくださって
    ありがとうございます。お褒めくださって、恐縮ではありますが、嬉しいです。
    そしてあぶくもさんの「自然とその中の一部としての我々人間、という世界観」という
    お言葉にとてもとてもドキッとしました。
    あの、うまく言えないのですが、私が最近ふとした時に
    感じていることだという気がしまして。
    小さな私を大きな大きな自然界が内包している、といいますか。
    そのこと自体はきっとフラットで、
    時に小さな人間にとって脅威にもなりますが、
    とても大きな恵みでもあって、その中で自分も生きているような気がしています。
    (・・・と、つい変な持論を展開してすみません)
    あぶくもさんが拙作から、そのあたりを読み取って感じてくださったような気がして、
    とても嬉しく思いました。そして伝えてくださって、本当にありがとうございました。

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