スピカ、あるいは葬送のための
3月の星みたいに
空を真似して高鳴るあの子の声がききたい
心の奥のほうで海が凪いだら
小さな舟にたくさんの花を載せて
塵になった明かりたちと一緒に
送り出してください
別れのことばを散りばめても
悲しくなんかない
3月の星みたいに
ただ空を行き来する
あの子の声が遠ざかるから
ここにある確かなものを
そっと抱きしめてあげたら
届くかなあ
たくさんの明かりが
無限遠の暗がりまで
繰り返されて
歌うみたいに
夢になるみたいに
ちいさな風を送ります
3月の星が
あたらしく生まれるはずの
どこにもない場所へ
コメント
届かないから、願い、祈るのでしょうか、人は
どこか遠慮がちな、怯えにも似た。
悲しみを秘めたやさしさを感じます。
美しい思いですね。
あまねさん、こんにちは、こちらでもよろしくです。さて、この詩の改行の具合が絶妙ですね。そして、全体の所々がすてきですが、「心の奥のほうで海が凪いだら/小さな舟にたくさんの花を載せて/塵になった明かりたちと一緒に/送り出してください」というところが特に好きです。あとずっときてからの「3月の星が/あたらしく生まれるはずの/どこにもない場所へ」というのもとても好き。すてきです。