遠い地図

或 休日の朝
溶かしバターのシナモントースト
ハムエッグの皿は
ほうれん草と玉ねぎのソテー、プチトマト
珈琲のナッティーな香りには
コンチェルト

振り返る事もなく
進む事もなく
確かにあなたは甦る

風と共に歌い
陽と共にかがやき
地と共にねむる
あの頃の、
夏の日
神戸の北野異人館街を巡って
下りきた鋪道の交差点
立ち止まり 目を落とすマップへ
「ここ。」
と、あなたの指先が示した現在地

二人は海にむかって並んで立った

ナルキッソスに恋したエコーの様に
あなたの声に わたしはおののき
すっかりつつみこまれる空と水の中で
あなたの 肌のいろが見たかった

投稿者

滋賀県

コメント

  1. この詩の冒頭の描写がおいしいです。
    そして全体を通して、詩の言葉が強度と重さをもって織り成されている。

    二人は海にむかって並んで立った
    など、情景が目の前に立ち現れます。

  2. @こしごえ 様へ

     お読みくださって、ご感想のお言葉を寄せていただけて
    嬉しいです!どうもありがとうございました。(*^^*)
     この作品は推敲を重ね、そのつどイメージを立てなおし
    ました。すると、原稿の方から私を引きこむようにして
    言葉が綴られ、脱稿しました。まるで恒星の様な光?を、
    放つ一作かもしれない…と自分では感じたのです。
     書いていて、こういう作品と出会えると…なんだか
    嬉しくなります。

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