スペインオムレツ
兄は東京の大学を出て 以後も
東京人の仮面をかぶった暮らしを
苦痛とは思わないヒトになる。
そのことを
きっと自分に故郷が
ちゃんとあるからだと語った。
もし その故郷がなかったら
「背水の陣だよ。」
とも。
彼が十九歳当時すでに
不治の病に伏す 一人親の母がいた。
病みながらも向日葵の様に、よく生き
躯はきりきり音たてながら 亡くなった。
病院から母が数日間 外泊すると
兄は帰郷し
母の作ったスペインオムレツが
白いテーブルの大皿に咲いた。
フライパンで崩さず、ひっくり返す
痩せ細った 腕はどれだけ痛かったことだろう。
そうして兄が東京へ戻ると
母は熱を出し寝込む。
「あんたは、ママの元気そうに笑ってる顔しか知らないだろう。」
電話口で 声荒げると、低い声色が鼓膜に沈む。
ノンちゃん
それがどういう事か分かるかい?
僕はもう 客人で
よその人なんだよ。
コメント
リリーさんこんにちは。
この詩を読ませていただいて、
詩の中に出てくる人達の、やさしさやせつなさが
それぞれ伝わってくるようで、涙がでました。
簡潔な表現でも、ひとつひとつに臨場感が宿っていて、
とても胸をつかれました。
素晴らしい作品を、ありがとうございます。
@草野まこと 様へ
こんばんは。(*^^*)
お読みくださいまして、ご感想の…あたたかいお言葉を
寄せていただけましたことが、とても有り難くて、嬉しく
思います。本当に、どうもありがとうございました❗️
関西から東京に出てきた組として、最終連で語られるお兄さんの切ない感情がとてもリアルに伝わります。年老いた母親が姉に見せる顔と息子に見せる顔が違うことに、この年齢になって感じ入るものがあります。
@あぶくも 様へ
そうなのです。母と娘と、母と息子は、…母親の見せる顔がちがうのです。
そばに、居る者の辛さが分かるか!と、兄に、言いませんでした。そばに
居られない者の辛さが、…私より大きいのだろうと感じ。兄のさみしさが、
分からなくても…伝わってきたのです。
関西から東京へ出た兄には、小学校から高校までを過ごした近江商人の
気風流れる大津の暮らしが、琵琶湖の四季折々の風景とともに…今も
心に息づいているのだと思います。
あぶくも様、お読みいただいてご感想のコメントを、どうもありがとう
ございました❗️思わず、そこにいる人へ話しかけるかの様に、返答して
しまいました。お寄せいただきましたお言葉、たいへん嬉しかったです。
凄まじく震えました。
故郷のこと、より一層深く刻もうと決意するほどに。
リリーさん、コメントを失礼いたします。大切な思い出を詩にしてくださってありがとうございます。私も弟がいるので、母親の態度の違いに嫉妬のようなものを、小さい頃から感じてきました。今、自分が息子の母親になり、母の気持ちも少しはわかるようになってきましたが、そばにいる者の辛さ、リリーさんの感じたお気持ちは当然と思いますし、その思いを抱えながらも、詩からはリリーさんのお兄さんを想うやさしさが感じられました。読んでいる人も母や兄妹との一言では言い表せない気持ちを思い出し、共感する、温かい懐かしさのある詩だなと思いました。
@たちばなまこと 様へ
お読みくださり、ご感想のお言葉を寄せていただきまして
嬉しく思います。どうもありがとうございました!
私たち兄妹は、京都生まれの滋賀県は「大津っ子」として
育ちました。今ではすっかり京都のベッドタウンですが、
昔は…のどかなまちでした。
玄関を開ければ、そこは琵琶湖。西に比叡山、北に比良山、北東に
「近江富士」と称されます三上山と、伊吹山。その向こうが鈴鹿山脈。
湖景は、日常生活の一部であります。
母が遺してくれた宝物、私にとって財産なのです。(笑)だから
私の詩には自然と「湖」を、書いた作品が多くなるのです。
この作品を書くことが出来て、投稿させてもらえる場所が、
ありました事に今とても感謝しております。どうもありがとう
ございました❗️m(_ _)m
@ayami 様へ
読んでくださってコメントを、お寄せいただきましてどうもありがとうございました!
お言葉、たいへん嬉しかったです。(o^^o)
こんな風に…思い出を、詩にできるときが私にきたんだなぁと、書いてみて歳月を実感
しました。作品を読んでくださった人達に、コメントをくださった皆様に、そしてこの詩人会に、私は感謝の気持ちでいっぱいです。
本当に、どうもありがとうございます❗️(笑) ayami 様の作品も、いつも楽しみに読ませていただいております。私も、この詩人会で頑張っていきたいと思っています。
最終連があることでこの詩の全体が締まっているように感じました。ですからこの最終連がとても重要ですね。でもこれは実際の出来事を詩にしたと思われるので、あえて感想を述べますと、私にはこのお兄さんの言葉は共感できませんでした。カッコいい言葉で、逃げているようにしか思えませんでした。いや。逃げちゃいけないだろここは、と思いました。自分がリリーさんと母親に助けられていることを認めなくっちゃ、と思いました。でもリリーさんがこのお兄さんの言葉から、お兄さんの悲しみを感じ取られたようなので、それはそれで良いことだと思いました。
@たかぼ 様へ
お読みくださいまして、ご感想のお言葉を寄せていただきました事、たいへん嬉しく思います。どうもありがとうございました!
この詩は確かに、書かれてある事全てが実話です。しかし、複雑な「家族」の営みと三人の姿が心情と共に切り取って、あるわけです。切り取ってしまっている事で、作品が物語となりフィクション化されてしまっているわけです。本来ならば、散文詩として書くべきだったでしょう。私に未だ、それだけの能力が無くて、拙い作品になってしまっているわけです。真実は、切り取ってしまったために、見えなくなってしまった。
たかぼ様からの、ご感想のメッセージで、その大切なことに気付くことが出来ました。
私が詩に、書くには…テーマが!大きすぎるのだと思います。そのことに、気付かせてくださいまして、どうもありがとうございます❗️m(_ _)m
もう一度、いつかきっと…散文詩に出来る時が来たら良いなぁと、自分に今思うのです。
よその人。いつまでも印象に残る響きでした。
@あまね/saku 様へ
はじめまして。お読みいただきまして、ご感想のコメントをお寄せくださり
どうもありがとうございました!嬉しかったです。
今後もどうぞよろしくお願い致します。m(_ _)m