りんごの誘惑
手には携帯
縛られたりんごの誘惑
赤く充血させた
見事な球体は僕の眼球
ころころ手玉に取られて
可愛がられる消費者
深く考える事を辞めて
衝動的にかぶりついては
啜る甘い蜜
酔いしれている間に
虫取られていく
命の時間
細まっていく未来の可能性
夢を求めて0と1の領域を
彷徨ったとしても
そこはすでに誰かが
貪り尽くした
抜け殻のようなものばかり
未知の感覚を味わうには
どうしたって何かしらと
似たり寄ったりの
ものになってしまう
だからといって自分自身を
信じきる事も出来ずに
投げやりに身を任せて
依存して鈍感
りんごに一度でも
齧り付いてしまったが
故の致し方なさ
楽しくもないのに
今日も手には携帯
見つめる眼差しには暗い影
空の光にも似た
悪魔のような常習性
照らされて導かれるは
考える事を辞めた
ゾンビのような夢の時間
幸せは時に残酷だ
コメント
てのひらについて、てのひらからの語る言葉を、てのひらへと、てらてらと、春のひかりのなかへ。
まさにSNSは現代のアダムとイブの禁断の林檎って感じですね。それによって知恵を得るのですが罪と死も得るという。