詩人

津に戻れ
モンスーンの変わり目が
激風の鳴き声

船員は蝋燭の火で刹那に浮かぶ
羽音のスローモーションを逃さぬよう

お前は死んだ
生業のために魂を絞る
言葉達を率いる事はできない
愛も魂も蜂蜜につけた

ラグーンの青さを見る
我が息子が独力で泳ぎ
晴れた遠浅の先の沖で
自由潜水の幻
明日はモンスーンの変わり目
引き返すも優しさもその業に従う
言葉を率いるために
深く吸って深く潜る日々を繰り返す

深く吸ってゆっくりと吐く
いつもよりも多く
誰よりもより強く
利のために詩域へ毒を注ぐ
浄化するために愛は
明後日へ逃げる
汚せば汚すほど
港へ離れるほど
やはり言葉を率いた

ここにいるぞ
詩人達よ
魂に従い
お前の器に毒を注げ

ここへ誘え
詩人達よ
魂に従い
罠に嵌れ

「パパ、朝に月がある!ついてくるよ!白い月が朝にあるよ!月は知ってる?知ってる?月はついてくるよ!」

投稿者

東京都

コメント

  1. おかえりなさい。

    蜂蜜につけて、もっと美味しくなったことがらたち。

  2. 生きる為にしなければならないことから、詩人の有り様(よう)と呼吸を取り戻す意志が伝わります。

    4連で泳ぎ、終連で朝の月を語る息子さんの童心を描くことが、この詩をより良くしています。

  3. 津に戻っても、体裁が変わっても、魂のフォルムはまったく変わってないとこがすごい。

  4. 詩に対しての、作者のスタンスが明確に伝わってきます。比喩としての「息子」と「毒」が活きていますね。

  5. →ナツコちゃん
    お久しぶり!元気そうで嬉しいです
    ありがとうございます
    ナツコちゃんのお陰で描けました

    たちまこさん
    →ただいま!
    蜂蜜には殺菌作用もあるので
    甘く緩やかな日々と見せかけて、鍛えられたのかも

  6. →服部さん
    ありがとうございます
    生活に埋もれて詩心が薄まったと勘違いしている男が、必死に取り戻そうとするんですけど、幼い自分の子供の言葉がもちろん意図せず自然に詩的なことに驚きます
    生活と暗闇と世界と小さい者の言葉が入り混じってそこから新しい哲学を見つけることができれば楽しそうどす

    →ティモシーさん
    ありがとうございます
    そう言って頂くと嬉しさの極み
    魂を口から引っ張り出して空気に慣れさすまで少し時間がかかりました

  7. →長谷川さん
    ありがとうございます
    毒を制して出した言葉が多いように思いますが、子供はナチュラルに良い言葉を出してくる
    でも、彼は彼でやはり日々いろいろなストレスを感じているのでもしかしたらそこも同じなのか、と感じることもあります

  8. 津(港)と月は対句表現と思いました。また始まりと終わりでも、韻を踏む言葉遣いが、最終連の情景描写に可愛さを与えていて、とても素晴らしい詩と思います。算段をよく練ってあるなと感心をしてしまいました。

  9. 竜野さん
    全て即興で作っているので
    刹那のひらめきで算段に到達する
    それは、俺の目指しているところです
    本当に嬉しいです

    日本WEB詩人会に参加、ありがとうございます
    もっとサイトを盛り上げていきたいです

    よろしくお願いします。

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